「車椅子になる前です」
「トキって男から聞いたよ。俺の過去を教えてもらっているそうだが、俺は女優さんを街で見かけたら騒ぐような男じゃない。街のロケ現場に人が群がるが、そこを素通りするタイプだ。作家だからわりと業界人だ。君ほどの超有名女優とは縁がないが、俺の小説は映画化したことがある。小さな映画館を転々とする程度の映画だがね。そこそこの女優さんとなら面識はあるし、飲んだこともある。そんなことよりも、今は君が秘書になってやる例の仕事の説明を早く聞きたいんだ」
「町で見かけたどころじゃないですよ。彼女になる人が、奥原ゆう子ですよ。それにアイドルが好きじゃないですか。松本涼子とかさ」
 人気アイドルの名前を出し、また口を尖らせた。アヒル口というやつだ。