「まさかでしょ。ラブドールと付き合ってきたんですか。もし痛くなったりしたら、擦ってあげますね」
「え? いや、もう痛くはならないよ。ありがとう」
 彼女は、友哉が神妙に礼を言っていることに気づかずに、またお喋りを始めた。
「先生の四十五年間が勝手にわたしの頭の中に入ってしまったの。もちろん、重要な光景だけが断片的にだけど。お母さんのこと、友達のこと、仕事のこと、昔の恋人のこと、元の奥さんの律子さんのこと、遊んだ女のことも。でも一番よく分からないのは、娘さんたちのことかな。今はどこにいるのかなあって」