「うーん、秘書じゃなくて彼女なんですよ。だから、あんまり本は読みたくないな。昔の女のこととか絶対書いてる。作家の先生って皆さん、そうだから」
「一冊はなに?」
「タイトルは忘れたけど、霊場に行く話。恐山みたいなところに。若い奥さんが自殺して、遺書に夫を憎んでいたことが書いてあった。そのショックで他の女にもあたりちらす。その死んだ奥さんと霊場で会うんだ。若い頃の律子さんのことかと思って、すぐに読むのやめた」
「じゃあ、一冊も読んでないじゃないか」
「うん。たぶん、ずっと読まない」
 敬語がなくなり、そして口をまた尖らせた。また思わず、こいつはかわいい、と唸ってしまう。しかし、自称未来人、トキのこともあり、何かとんでもない罠があるような気がしてならない。このままでは何から何まで良いこと尽くめだ。