「着替えの下着と財布やパスポートだけ。必要な物は現地で買えばいいじゃないか」
「男の人は身軽でいいですね」
「あ、その鞄、持つよ」
 彼女の大きなトートバックを持とうとすると、「大丈夫です。重いものは入ってません」と断った。
 エレベーターの中ではどちらも喋らなかった。
 lineトキさんからもらった、か。どうやら本物の美人秘書のようだ。誰なんだ。
 友哉は、顔を隠している女が誰なのか、それが分からず緊張していた。
 まさか律子じゃないだろうな。
 車椅子になった自分を捨てた妻。セックスレスと浮気が原因で離婚するかしないで揉めていた事もあったが、あのタイミングで来るとは、今となっては見事としか言えない復讐劇だ。
 友哉はそう思い、少しだけ自虐的に笑った。