友哉がコーヒーカップを人差し指で指した。それから、フロワの一角にある観葉植物を見て、「あの植物と人間の時間はきっと長さが違う」と言う。
「しかも時間は一人では存在しない。認識できないんだ。例えば地下室に幽閉されたとしよう。しかも真っ暗闇だ。窓から光も射し込んでこなくて、壁があるのかないのかも分からないただの暗闇だ。昔はヨーロッパで死刑に出来ない犯罪者を死ぬまで地下室に閉じ込めていた。息ができる棺桶みたいなものだ。そこに閉じ込められた人間は時間を認識できない。相手がいないからだよ。人間の相手だけでなくて、壁すらも見えない。風も吹かない。もちろん太陽が沈むのも見えない。つまり、その人間には時間が存在しなくなるということだ。時間は対する人や物がないと存在しない。言い替えれば、時間は相手が作ってくれるってことだ」