「後で返すよ」
 ワルシャワの町は静かなものだった。芸術的に美しく、観光客はその街並みに酔い痴れた表情で歩いている。明日、どこかでテロが発生するようには思えない。
「信じてって言ったら、なんで怒られるのかわかんない」
 また声を上げるが、怒気ではなくべそをかいていた。
 大げさな貧乏ゆすりをするように足をバタバタさせる。まるで子供だ。彼女のその様子は、我儘なお姫様のようで、かわいらしい顔立ちのせいかなぜか不快に感じない。それとも彼女の言うように、俺がこの歳になって女の子の仕草に騙されているのだろうか、と友哉は思った。