一人暮らしの父親がいると言っていて、場所は東京の郊外だった。一戸建てなのか賃貸なのかそれすらも話してはくれない。母親は亡くなっていて、ゆう子は一人っ子。出身地は福岡だが、母親は沖縄の人で、父親が福岡と言っていた。それくらいしか知らなかった。
「この鞄にちょうど一億円入るはずなんだけど、これが通帳と印鑑です」
 案内係りの古参の女性に告げると、別段驚いた様子もみせずに、「ここに記入してください」と記入台に行くように促した。