「テロリストも父親?」
 ゆう子は目を丸めた。そのままの表情で、
「先生、優しすぎます」
と、まさに呆然とした口調で言った。
「そうだな。今の台詞はなかったことにしてくれ」
「はい。だって、それを考えたら、例えばですよ。ヒトラーが現われたとしたら、やっつけられませんよ」
「ヒトラーは子供がいない」
「あら」
 ゆう子が漫画みたいに頬を赤くした。知識の間違いを口にするのが恥ずかしいようだ。