相馬翔は、とても好青年だった。避けるように離れた涼子に襲い掛かるかもせず、「もう少し飲もうか。テレビでも見ようか」と、気を遣う言葉をさかんに作った。
「嫌じゃないの。気持ちの整理をしてます」
 ぎこちなく笑って言うと、
「はじめて?」
 びっくりしたのか、大袈裟に目を丸めた。
「わたし、ちょっと前にテラス席から転落して頭を打ったの」