記憶の断片の数々が無数に蘇る。それも愛の時々の切れ端ばかり。
 メイクをする手を止めて、ベッドの上に座った。そこには相馬翔に抱かれた跡が生々しく残っていた。シーツは乱れ、出血を拭いたティッシュは、ゴミ箱の横に落ちていた。彼の体液の臭いもした。ゴミ箱の中のコンドームから漏れているのだろうか。乳製品が腐ったような臭いだった。
 昨夜、素敵だと思ったセックスが、急に不潔な行為だったと思うようになって、涼子は涙が出そうになってきた。「やらなければよかった」と、口に出していた。