ゆう子は飛び起きるほど驚いた。そして現実に起きることができ、夢から覚めた。なのに、トキと名乗る男は目の前に立っていた。部屋の隅、寝室のドアの前に。
 左手を見ると、指輪もはまっている。
 背中には冷たい汗が流れ、動悸は鎮まらない。もはや、下着姿はどうでもいいことだった。すると、
「パニック障害の発作が出ては困る。落ち着きなさい」
 彼がそう言うと、彼の左手が緑色に光った。よく見ると、彼もリングを指につけていた。ブルガリではないが、銀色のシンプルな指輪だ。ただの輪っかにも見える。
 間接照明で薄暗かった部屋が、新緑の森の中にいるような瑞々しい緑色に一瞬染まった。lineなんか気持ちよくなってきた
と、ゆう子は惚けた顔をした。