「治したって?」
「未来の医療技術で治した。今は超人のような男になっているが、まだ大けがをした時の心の傷は癒えていない。本人は否定しているが、私の見立てでは集中力が欠如している。さっきから君は彼のことを、優しい男のひとだ、と呟いているが、今はそうではないと思う」
「そりゃあ、そうでしょ。わたしだったら自殺してる」
 ゆう子は丁寧な言葉も忘れ、絞り出すように言った。その勢いでなぜだか、『この男の人の役にたちたい』と強く思い、膝の上に置いていた枕の端をぎゅっと掴んだ。
「彼の記憶の一部を消して、心の傷を治療することもできるが、それをしてしまうと性格が変わってしまい、本人ではなくなってしまう。彼は優秀だから、違う人間にしてしまうわけにはいかない。わかるな」