通称リチャードと呼ばれることになったマスターは、とても気が利く男で、利恵が、「ハルカさんに会いたいけど連絡が取れない」と言うと、店の扉に「本日は貸し切り。ただし、ハルカ・キタジマは入店OK」と書いた札をかけた。アメリカ人らしい身を切ったユーモアだった。道楽でやっている店でもあって、ジャズのアナログレコードとCDがいっぱい飾ってあった。
 ところが、早々に店の扉が開かれ、女の足と靴が見えた。
「わたしの名前が書いてあるけど、なに?」