「動くな」
「通報するボタンはない。本当だ」
 男は、カウンターの中を覗き込み、顎を使って、酒を出すように促した。
「ハルカを狙って入ったんじゃない。日本人を狙ってきたんだ。扉に日本人の名前があったから、殺しにきた。二人もいて幸運だよ。おまえたちを殺した後、そこの学校にも行く」
 興奮している様子もなく、目に生気がない。クスリをやっているようだった。
 リチャードがバーボンのロックを出すと、男はそれを一気飲みし、「もう一杯だ。もっといい酒を出せ」と言った。