「昔の小説やフランス文学にあるね」
「そう。女がしつこいんだ。あなたの体液が欲しい、体が欲しいって。お金はいらない。結婚しなくていい。あなたが欲しい。それだけだ。俗から離れた夢のような世界だ」
「遠くを見て言った。元カノもしつこい女だったでしょ」
「またか」
 彼はうんざりした顔をしたが、どこか口にしたいようで、
「しつこかった。俺が執筆している横で、スマホを見てるんだ。ずっと座ってて」