第八話 すれ違う気持ち

◆未来の武器と特殊用語

【AZ】ゆう子が持っているAiタブレット。ゆう子の三年間の記憶がインプットされていて、膨大なテキストがゆう子の質問に答える。また、友哉を転送するための座標や距離などを計算したり、友哉の健康管理もできる。世界中の国家の機密機関、監視カメラなどに侵入できる。Aiのため、ゆう子の感情にも答え、中にいる知能は『シンゲン』という名前の男。
【RD】友哉が持っている拳銃の中に埋め込まれた武器。地核のエネルギーが放出されるが、微力、強力の強弱ができる。持ち主の心理、意図に反応し、周囲の空気を纏うと、高熱の蛇のような動きも見せる。ただし、相手の悪意、敵にしか反応しない。
【リング】友哉とゆう子が指に嵌めているこの時代の指輪だが、中身はトキが改造した未来のリングで、ゆう子のは通信のみ。友哉のリングは、プラズマシールドを発生させる役割を担っていて、緑色に光ると、人の軽い病気や軽度のケガも治療する。友哉の体の中にあるガーナラを放出する役割も担っている。
【プラズマシールド・電磁壁】すでにこの時代にもあるが、トキの世界では、人間の体をオブラートに包むほどの精度で、友哉が転送される時に、自分の体を保護しているのもこれである。
【光】友哉のリングが緑色に光る時に発生するセンサー。人間の脳の中に侵入し、病気の根源をコントロールする。痛みを取ることもできるし、避妊もできる。
【ガーナラ】友哉の体の中に投与されたハイブリット生薬。無数の生薬と一部化学物質。友哉の体は病気にはならなく、腕力は人類で最強。無限の精力もあるが、副作用が悲惨で、トキの世界で禁止薬物になっている。副作用がある時は、人類最強からあっさりと弱化。歩くこともできなくなる。
【マリー】リングの中に組み込まれている重要な「光」。女性ホルモンを活性化させたり、男の怒りを和らげる効果。また、友哉が愛している女や友人など、守りたい相手を検知する役目も担っている。
【ダークレベル】友哉の目の前の人間が悪か善かを判断する数値。基準は不明。五十億人分のダークレベルがAZに入力されている。
【回復】友哉が、ガーナラの副作用で疲れた時に、友哉をセックスと色気で元気にさせる医療行為。ゆう子が名付けた。

『佐々木先生、申し訳ない』
 男が泣いている。寝たきりの妻、登校拒否の長女、不良になってしまった次女。崩壊寸前の家族を守ってきた、そう様々な苦労に耐えてきた、実直な気骨のある親友の男がdots

 友哉は言葉を失っていた。彼はベッドに横たわる友哉と同じ目線に身を置きたいのか、頭を深く下げた。それを見て、動かなくなった足が震えたような錯覚で、全身に鳥肌が立った。
『申し訳ありません。dotsなぜ、こんなことになったのか。あいつが何を考えているのか。私はなんと言ってお詫びしたらいいのかdots

 敬語に言い直した彼は、もう一度、ベッドの上の友哉に頭を下げ、病室の机の上にある離婚届けに目を向けた後、
『なんてことだdots。何もかもが最悪だ』
 その後、絶句した彼、松本航はよろめきながら病室から出て行った。
 まさに背中も泣いていた。雪山で凍えているように震え、小さくなっていた。

 友哉は天を仰ぐように思わず、病室の部屋の天井を見た。そこにはどす黒い血が付着していた。震える手でナースコールをして、
『天井に血が付いている。部屋を替えてほしい』
 友哉は、やってきた看護婦に怒鳴るように捲し立てた。
『血なんかついてませんよ』

『嘘だ。この部屋は特別室だ。大部屋が満室だからって、海外でウイルスに感染した患者を入れる部屋だ。そんな患者が天井に向けて血を吐いたんだ』
『作家の先生は考えすぎですね。安定剤を点滴するように、先生に言います』
 看護婦は携帯電話を取り出すと、担当医に友哉が錯乱していることを伝えた。
 医療用大麻を注入された友哉は、体が温かくなってきて、その後、頭がぼんやりしてくるのが分かった。

 しかし、その効果が切れると、真っ白なはずの部屋の天井に赤い血が見えるようになった。
 退院後、友哉はそのフラッシュバックに悩まされて、
lineまさか、これがPTSDなのか
と呆然としていた。そして退院後、一人になった部屋の天井を見た。眉間に太い皺を入れ、凝視していた。
line俺はどんなに辛いことがあっても冷静に生きる。取り乱した姿は、

dots美しくない

 ◆

 友哉が目を開けると、ゆう子と利恵と一緒に宿泊していたロスアンゼルスのホテルの部屋の天井が目に入った。思わず、目を逸らすと、その視線に先に利恵が立っていた。窓に寄りかかるようにして、外を見ている利恵。右手にコップを持っている利恵は、上半身が男物の白いシャツ。それは友哉の私物だった。下半身は深緑の下着だけだった。地味な色だが白いレースが付いていてバランスがいい。シャツの中にブラジャーもしていなかった。

 背が低めのモデルのようなスラリとしたスタイルに、すぐに目を奪われてしまう。
line美しい。今までに見た女でもっともdots
 ゆう子の健康美には生々しさがあるが、利恵の体には、清潔感が常に漂っていた。例え、セックスに乱れても。部分的に見れば、奥原ゆう子の美しさに文句のつけようはなかったが、総合評価は利恵が優位だった。所作や優雅な様子がそう思わせるのだ。