「いないね」
「もしかしたら、本当は彼女がいるとかなら仕方ないけど」
「いないよ」
「だったら、普通、来るでしょ。セフレは嫌。だってワルシャワで仲良しになった」
「そうだな。ケンカしたのは最初だけだ」
 ゆう子は彼のその言葉を聞いて、髪の毛をかきわける仕草を見せながら笑みを浮かばせた後、飛行機の窓に目を向けた。真っ暗で何も見えない空中を見ながら、
「人間の本質を一言で言うと偽善で、人生を一言で言うと寂しい」