10月7日新刊『私は昨日まで日本を愛していた』発売
個人コンサル随時受付中
10月7日新刊『私は昨日まで日本を愛していた』発売
個人コンサル随時受付中
3月17~個人コンサル特典企画します(全国出張。4月1日岐阜)
詳しくはブログにあります。(アメブロ)
4月1日から、名古屋で個人コンサルをやります。
詳細はブログに書きます。
3月5日より個人コンサルイベントを大宮で行います。
詳細はブログに。アメブロです
新刊『昨日まで日本を愛していた』執筆中
公式のアメブロからインスタ、
ツイッターのリンクあります
TOPページの画像、毎日更新。
写真インスタはtakeru0502rd
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【告知】新しいTwitterは、
@yamamiya_r1289です。
【告知】Twitter半凍結でアカウントを削除しました。新しく小説の名義でやります。
新型コロナ禍で個人コンサルは大宮付近限定です
詳しくはツイッターで
【注意】個人コンサル大宮半額は常時募集してます。予定を確認下さい
【告知】個人コンサル半額セールの場所は埼玉県限定です。
よろしくお願いします。
表紙写真は、
https://www.instagram.com/r12ryokoにあります
安倍さんの持病を罵倒する人は、自分も難病と闘いながら、
仕事をしてみろ。
自分たちから「三密」にならなければ、
いいだけだよ。簡単だって。
世界は変わり、あなたが偉業を
成し遂げる番だ
命はひとつしかないが、学校の友達は、
またできる。新入生へ。
自粛しないのがカッコいいとか、
そんなレベルじゃない。自粛!
コロナの騒ぎで世界と戦う麻生太郎さん
人間の真実と本心は、病の中にある。
それを見抜け。
俺が愛してるのは目の前の真実で女じゃない。
俗語で片付けるな
合格おめでとう。全国の受験生、おめでとう
忘れたい事があるならバカな遊びに興じたらいい。
考えてはいけない
日産を救った男を大悪党にする
日本の大人のお子様たち
苦しむため、バカにされるために
生まれてきたんじゃない。やり直せる
あなたとしたいのはセックス。
何が悪いの?わたしは女よ
あなたには価値がある。
教育を受けた日本人は頭が良い
最後の○○が何度も出てくる
あなたが強ければ。
同じ時代を生きた
違う時代の人もあなたの友だ
学校の虐めを放置するこの国を変えよう
大切なものは失ってから分かるから、
今月も冷静にね
勝負に出ていれば、いずれは勝つ。
何もしないことは弱さだ
平和が続くことを祈る
男と女は出会うために生まれ
別れるために生まれたんじゃない
サイン本などを購入したら住所をお知らせください。
スクリーンに残る永遠の美女が
Blu-rayで蘇る。乾杯。
信じてる。愛してるよりも好きな言葉だ
(友哉)
同じ時代に生きていて良かった
…と思える人たちがまだいる
時代が真っ暗闇だから、質素に美しい君が
輝く
素敵な男性に恋をして
何が悪いんだ!(ゆう子)
作品を創ればお金になる。人も繋がる。
「架空」はもう終わった
大事な話は慎重に静かな場所で
するべきよ
俗を相手にするな。俺だけを見ていろ
(友哉)
「手を握って、愛してるって思っててくれ。恋愛には興味はないがおまえには興味がある」
(友哉)
今、目の前の真実を見ろ
今の君と過去の君は違う(友哉)
(愛せないなら)わたしのことを信じて
(ゆう子)
どこが嫌い?(ゆう子)
どこも嫌いじゃないよ(友哉)
愛はコツコツ積み上げていくものよ
(ゆう子)
毎日があなたに一つくらいは
チャンスが転がっている。見つけられる
誕生日おめでとう、利恵。…の外見の
モデルの女性 笑
快楽は幸せではなく、幸せは快楽ではない
令和はより、良い時代になりますように
悪い環境を変えれば、
あなたはもっと前に進むことができる
この季節の富士山は本当に美しいね
男と女が消えた平成が終わり、嬉しく思う。
人は必ず死ぬから、若くして自分から死ぬ必要はない
令和、いいね
女の美しさを見せることに躊躇のない美女がいる
恋が愛に変わり、信じる気持ちが生まれると、
二人は永遠になる
遠藤憲一さんの温泉のドラマがステキ
わかったよ、かわいいよ。日本の猫。
愛してる
孤独を何度も経験して、本当に変わった。そして美女が
やってくる
猫を救う人たちが増えた時代に乾杯
美を取り戻せば、地球のすべてが良くなる
日本のサッカーに光と希望が見えた。強い。
笑うのが苦手な女子の小さな笑顔を見つけてあげる
俺は弱音は吐かねえ
才能と車は裏切らない
人間の進化はペットとそれと同じ種を守ることで証明された
今年も大戦が勃発しなくて何よりでした
たぶん生きてる人。
マイケルジャクソン
Do They Know It’s Christmas?
良い服、かっこいい服を着よう。人生が変わる
愛を持っている女は愛を持ってない男に恋をするね
昔からそうだからいいんだよ
雪が降って一時でも街が美しくなれば…
利恵と友哉の成田のラブシーン。あの利恵と会える。
「おはよう」を言ってくれる人が増えた
今日も優秀で将来性のある青年と会った
親友になる男は女の話を
本音で語ってくれる
なんて優しい女なんだ。彼女はなにも
疑わない。
楽観的な優しい女子が地獄に落ちないよう
頑張るのが男の仕事
最高の料理が最高の美か最高の女が最高の美か。
勝負しようじゃないか
定期セミナー、楽しかった。講演会は厳しく、セミナーは和やかに。
6日の定期セミナーのテーマは
挫けない方法。やる気が出る
心が疲れたら時計(時刻)を捨てて休むことだ。
東京講演会のお問合せは080-3416-5754
(男性アシスタントが応対します)まで
講演会参加希望のA.Hさん
メルアド不通で案内ができません。連絡をください
21日の東京講演会の詳細はメニューの【ブログ】をクリックしてください。
あまり笑わない女性が、笑ってくれた
今日から四級のルートを潰していく(ボルダリング)
結婚しても女でいる女になってほしい。無理か。でもなってほしい。
疲れても愚痴を零さない女たち。死ぬほど疲れるとやっと薬に頼る男たち。
強い人は多い
疲れが出るのは頑張ったからだと思えばいい。
夏は女性の浴衣姿で、日本人で良かったと思う。
私の脳は一瞬だけ神になる。あなたにひどい悩みがあるなら。
クロアチアのモドリッチのように、死ぬ気で走れば結果は出る
次にはできる。頑張ればできる。
西に良い縁がある…しか出てこない。おみくじ。
サッカーW杯、開幕! 日本は勝つよ
運命の人は時間の呼吸が合うものだ
老人は死について学べばよく、強欲な老人は
常に老害だ。
正攻法では勝てない時代。つまり勝った奴らは悪党ばかりだ。君はきっと違う
勝者には計画性がある。そして品格も。
何もかも分析する必要はない。美しいものは美しいでいい。
新しい靴は気分がいいよね!
カッコいい歳のとりかたをしてきた。
早起きは三文の得は本当だった。逃してしまった(笑)
ペイパルの日本語問合せサービスが、とても良かった
第十七話 クリスマスに現われた少年
悪女ばかりの世の中で、僕は「女神」に救われる
優しいだけが取り柄だと言う少年が、
本当に、優しかった。
桜を一緒に見られる人がいる
母親が自分の子を理解し、父親は世の中を理解する。それがベター。
熱帯魚を見て癒される
巨人に上原が帰ってきたなら見るよ
元気で頑張って!と言ってくれた人が、すごい花粉症(笑)
告知。広島のN様、コンサルのメールが戻ってきてしまいます
小説の虐待シーン終了!辛かった。これからエンターテインメントに戻る
花を見ていると、生きているのが嬉しくなる
モネの睡蓮を見た時以来の美の衝撃を受けた。
悲しいことと嬉しいことが、交互に起こるのは当たり前だ。嬉しいことは地味にある
友人の舞台を観賞に行った。皆、一生懸命で力になった。
自分の書いた話に感動して、泣きそうになった(笑)
僕らに時間の無駄遣いなんかない。世の中の速度が速すぎるんだ。違うか。
まだあきらめていない。あの夢、あの愛を。
エンターテイメントは無名でも新人でも、素晴らしよ。
彼女は水着じゃなくでも南の島が似合っていた。インディゴが美しい
学校のイジメを無くしたら、まともな世の中になる
ジョージマイケルは自分の財産を寄付に使い果たし、亡くなった。
資本主義社会がなんなのか。勉強したら楽しいよ。逆に金の亡者にもならない
亡くなった大切な人を忘れずに、しかし自分の愛ある人生を歩んでください。
悪女も女神もかわいいオンナ。
小説「衝撃の片想い」第四話終了。第五話に出てくるヒロインを早く描きたい。
川越氷川神社にて、願いが叶う奇跡が起きた。
本年もよろしくお願いします。小説読んでね。
来年は、人の悪口が減りますように。女神が亡くならないように
また急に怒鳴った。まるで雷が轟いたようだった。富澤が腰を抜かしたのか、受話器を持ったまま座り込んだ。
すごい。傍で見たい。そしてこの刑事たちがいなくなったら、彼はどう変わるのか。それも見たい。
ゆう子は、防犯カメラの映像を見ながら女の体の奥が熱くなっているのが分かった。数日前に優しく抱いてくれていた男が、巨悪権力と戦っていて、しかも優勢になっている。また、自分の理想の男性像を見せつけられた。偽善が大嫌いな自分の代わりに奴らをやっつけようとしている。そう、恋をした男性が
北朝鮮との戦争はない
焼きたてのパンがおいしい
長いものに巻かれない人生に悔いはない。
口角を持ち上げて言う。友哉のほんのわずかな勘違いに気づいたようだ。
成田空港では「彼女になる」と宣言し、ワルシャワでは「セックスだけでいいんだ」と主張し、「死ぬまで傍にいる」と、いきなり愛を誓い、さて、今度は何を言い出すのだろうか、と友哉は常に身構えていた。
十日間、友哉とゆう子はセックスだけをしていた。
「愛のないセックスはやめておけ」
と機内で説教をしたが、お互いがそれを分かっているなら問題はなかった。
途中、何度か言葉を止めながら、苦しそうに最後まで言い切った様子だった。
「付き合わない方がいいよ」
「なにに?」
ゆう子の言葉はたまに主語がなくなるから、友哉は訊き返した。
「そういう事件に」
「ああ、そういうことか」
「わたしとも付き合わない方がいいよ」
「これはスルーしよう」
ゆう子はそう言った。
「いいのか」
「殺される人が五人以下はほとんどスルーする。友哉さんの体がもたない。それに、金属バットで父親を殺したとか、女子高生が産んだ子供をコインロッカーに捨てたとか親の虐待で幼い子供を殺したとか、介護の介護殺人とか、そういうのは今の時代はきりがないから」
「そうか。頼もうかな」
考えもなしに生返事をした。ゆう子は、彼がやる気のない返事をしたことに気づかずに、「どんなのにしようかな」と笑みを零して呟いた。
日本では毎日一回は殺人事件が発生している。
だが、ゆう子の記憶にあるほどの大事件は向こう一週間以上なく、最初に目立ったのは、ニートの息子による親殺しの事件だった。
合意したレイプ願望もあるようだし、AV女優にでもなればよかったのに、と友哉は嫌味ではなく真面目に思い、首を少し傾げた。
「腕時計しないね」
友哉が考え事をしていると、ゆう子がリングがはめてある左の手を見て、唐突に訊いてきた。
「入院中、激やせして、手首が細くなったからやめたんだ。売ってしまった」
「世界時計にしようよ。わたしが買ってあげる」
「最後のひとつだけ、疲れる順序は分かるか」
「大きなケガを治す、病気の患者さんを治す、長距離の転送、プロテクト、余計な腕力を使うの順。なんだ、セックスは混ざってないぞ」
ゆう子が残念そうに言った。
そんなにセックスが好きなのか、しかも露骨にそれを口にする。エッチと言わずにセックスと言うあたりも、セックスに真剣に取り組んでいるのだろうか。
「それから、わたしが寝ている時に友哉さんに危険があったら、AZが自動的にじゃじゃじゃーんって飛び出してきて、友哉さんが慌てているのをフォローしますよ」
「じゃじゃじゃーんはわざとだよね。面白くないよ。天然じゃないとだめ」
「だから、わたしは寝る時は寝る! 昼寝もする!」
今度はほっぺたを蛙のように膨らませて言った。言葉遣いがおかしいのを突くと不機嫌になるようだった。
るか、強くなるのが遅れるから、プラズマのプロテクトに頼らずにさっさと戦った方がいいって書いてある」
「さっさと?」
「早急にって書いてありました。ごめんなさい」
「いや、いいんだ。突っ込みがいがある女の子だと思って」
友哉は笑ったが、ゆう子は口を尖らせただけで、笑わなかった。
友哉がくすりと笑うと、ゆう子が呼応するように笑って、少し頭を下げた。
「でも、女がいないとあっという間にスタミナが切れるようだな。そうだ。危険を警告するよね。リングが赤く光って。それはレーダーと一緒の原理かな」
「うん。警告は距離関係なく遠くの人も検知するから狙撃されることもないみたい。近くにいる人間に殺意があったら、それこそ、その人間の脳の異常を検知してリングが赤く光る。リングが友哉さんの脳に指令を出して自動的にプロテクトするけど、疲れちゃうと何もかも弱くなってい
ゆう子が、初めてトキの悪口を言ったのを聞いて、友哉が声を出して笑った。
「彼は人の目は見ずに考え事ばかりしていた。人を騙す人間はあらかじめ言葉を用意していて、自信たっぷりに相手の目を見て話すんだ。あれはいい奴だ。あと、毒ガスや毒物は? サリンとか」
「ガーナラが解毒します。今から死ぬって言うけど、わざとじゃないので。えーと、最強のガーラナを得た男性は低血圧のスタミナ切れで死ぬ以外に死ぬことは寿命以外にほとんどないみたい」
「横浜のマンションの住所」
「」
「成田に行くまでに教えると、わたしが友哉さんのマンションに行っちゃうと、トキさんが思ったのかな」
「それが正解。さすが、未来の世界のトップ」
「くそ。あの結婚詐欺師のような笑顔のお兄さんに、わたしの性格を見抜かれてるとは」
「そ、そんな自己犠牲」
「守るのは近くにいる人間で女に限らないと思うけど、マリーの正体が分からないとなんとも言えないな」
「うん。このAZ、タイマーがかかっているから」
「新しい情報が時間が経つと出てくるの?」
「うん。友哉さんのことで言うと、成田までは出てこなかった情報が今は出てきた。例えば」
「た、例えば?」
友哉が息を飲む。
「プラズマのバリアをリングが届く範囲で近くの人に転送してるの。ん?」
「どうした?」
ゆう子が目を皿のようにしてAZを読んでいる。
「マリーってなんだろう。マリーが仲介して、最後の力は傍にいる人に与える」
「検索しなよ」
「出ない。友哉様が使用したら出るって」
「俺と君が爆発に巻き込まれた時に、最後に君を守って俺が死ぬようになっているんだ、きっと」
「逆にそれが友哉さんがもてない欠点かも。女に神経質になりすぎだと思いますよ。映画に出てくるような美人スパイに撃たれて死にそう」
「プラズマ電磁シールドとかでプロテクトするのに、美人スパイに殺されるわけないよ」
「友哉さんが美人スパイに見惚れていたら美人スパイの殺意を感じないから、プロテクトしないかも知れません。あ、すぐ近くにいる人も守れますね。もちろん、疲れますけど」
「近くの人も?」
「友哉さんって何度かもう怒ったところを見たけど、すぐに鎮まるから、怒りはお芝居なのね」
と分析してきた。
「そんなことはないよ。切れてるだけさ」
「ううん。きっと、そろそろ怒ろうかなって考えてるんだ」
「俺のそんな夢の映像も見たの?」
「うん」
ゆう子は少しはにかんだ。まるで初恋をしている少女だった。
「え?」
友哉が怒ったのを見て、ゆう子がだらしなかった足を揃えた。それを見て、友哉は毒気を抜かれて、怒るのをやめる。
行儀が悪いのではなく、わざと見せているのか、と。
彼女なりのアピールなのだろうが、どこかかわいいと思った。
「あんまり死ぬって言わないでくれよ」
と笑って言うと、ゆう子はほっとした顔になり、「そんなに言ってた? ごめんなさい」と息を吐きだしながら言う。そして、
「女を抱いている時には筋肉はそんなに硬くなってないよ」
「そりゃあ、そうよ。ケンカしてるわけじゃないんだから」
「光を使っての治療も少し疲れる」
「光の治療はガーナラを使わないけど、それを使用するためのスイッチや強弱の調整を友哉さんの脳で指示しているから疲れるらしい。友哉さんがハードディスクで、リングがソフトなのかな。ハードは酷使するとすぐ死ぬからね」
「死ぬ、死ぬって言うな」
ゆう子と友哉はまるで愛のないセックスや愛撫はしているが、まだ触れ合うようなKissをしていない。お互いが、体の心配をするのが、唯一の恋人同士らしさと言えた。
「友哉さんの体にその最強のガーナラが投与されていて、それが友哉さんのリングを通して、誰かの病気を治すの。つまりリングの中に薬があるんじゃないのね。その時に友哉さんの体の中からガーナラが出てしまうから、激しく疲労するんだ。だけど、女を抱くと、血流が上がって、ガーナラが体の中に巡り、体力も戻るってことです」
「わたしのこと?」
「君は夢のひとつ。副作用のことだよ」
ゆう子が、「えへへ」と声に出して笑った。
「最高の褒め言葉を言ったのに、その程度か。どうしたらいいんだ」
「愛してるって言って」
「」
「はいはい。まだまともにKissもしてないからね」
「戦闘用」
少しばかり体をのけぞらせてしまう。
「他にも近視や胃腸障害も治ってるでしょ。友哉さんの今の体は医者がうらやむほどで、健康診断でパーフェクトだと思うよ。だだ血圧は異常に高くて、市販の血圧計でマックス。病院に行ったら強制的に入院させられるよ」
「脳の血管も強化されてる?」
「当たり前」
「目はよくなった。精力はつくし、筋肉は一時的に強くなる。夢のようだが、地獄も付録でついてきたか」
また、死ぬと言われて、友哉は落ち込んだ。
男の性欲に対してはよく気の付く女だが、俺を超人と思っているのか、生死に関する部分は楽観しているようだな、と友哉は考えていた。
「なんで俺には、そんなに強烈なガーナラなの?」
「友哉さんのケガが重くて骨を治療する部分的に治療するガーナラは使えなくて、たぶん、最強のガーナラを使って完治させたんだと思う。通称戦闘用ガーナラだからね」
「大麻のような生薬は使ってあるから、ようは両方よ。そのリングを使って、リングの光だけの治療と体内にあるガーナラを使った治療、その両方での治療。脳を光で刺激するだけで治せる病気がほとんどだけど、ケガなどを治すにはガーナラが、友哉さんのリングを通して、患者の皮膚から体内に侵入していくらしい。友哉さんが、自分の体内にあるガーナラを使って誰かの命を救えば、その人間は病気になる前よりも強く若々しくなるらしいけど、友哉さんが死ぬそうよ」
「いるでしょ。統治しようとしたら。ロシアも寒くて住めなくなって、ロシア人は世界に散らばったらしい。南米はトキさんの国の技術を頼って生活してるって。アフリカはロボットくんたちの国になっていたから、今は誰もいない」
「人類滅亡寸前だな」
「セックスできなくなって、ガーナラって薬を開発したくらいだから、当然ですよ。おまけにロボットくんと戦争してるんだもん。まあ、予想通りの未来ですね。そうそう、トキさんの世界、片耳だけの女ばかりってどういうことだろうね」
「片耳ばかり?」
「向こうは訊かれるんじゃないかと思って、答えを用意しているから大丈夫だよ。トキさんの時代では日本の北海道は気候の変化で住めなくなったらしいけど、トキさんの敵が活動拠点にしているから放置しているらしい。沖縄より南西のほとんどがトキさんが統治していて、中国はどこかの戦争でなくなっていて放射能に汚染されているらしい。欧米はロボットとの百年戦争でほぼ壊滅」
「敵がいるのか」
「人口が少ないからできた、だって」
ゆう子がAZを見て言った。
「な、なんて入力したの?」
「トキに世界を征服できるのかって」
「やめてくれよ。聞かれてるかも知れないじゃないか」
友哉が焦ったのを見て、ゆう子がクスクス笑ってる。女のこと以外で初めて、友哉が狼狽したと思って、笑いが止まらない。
「友哉さんの背景は調べ尽くしているけど、あんまりこの時代の背景は調べてないみたいですよ」
ゆう子が気を取り直してそう笑う。
「普を例に挙げるのもおかしいよ。世界を統治しているなら昔のイギリスじゃないか」
「そうだね。なんか時代背景は本当に適当」
「民族と政治。両者を暴力的、そして独裁的に一つにしないと世界は統治できない。ヒトラーがやろうとしたことだ。あの男にそんなことができるのか」
円周率をひとつの記号に短縮するように、何から何まで圧縮して、AZの中に格納しているのだ。現実に、友哉の銃も、AZも圧縮されて消える。情報が圧縮されているのも想像できるし、AZの中に例の光の様々な力が圧縮されて入っているから『あなたの記憶を消す』と反撃してきたのだ、とゆう子は考え背筋を震わせた。
トキさんが誠実だったから持ってるけど、そうじゃなければ東京湾にポイだ
ゆう子が何を聞いてくるのか予想していて、その答えまでもテキスト化している。ゆう子だけではなく、友哉の情報も。ダークレベルが高い人間の情報も。レベルが低くても、友哉に近づいた不審な人間のデータも、すべてAZの中に入っている。
Aiとテキストだけで、ほとんどの会話を可能にしている。
この時代のAiは感情は予測できない。わたしのジョークに対応するなんてありえない。
テキストの膨大なデータにしても、ゆう子の感情までも予測して収められている。
悔しいけど、わたしのお喋りが常軌を逸していたから、トラブルになったんだ、とゆう子は自嘲気味に苦笑いをした。「友哉さんは神なの?」と二十回くらい聞き続けたら、AZが違うテキストの一部を見せてしまったのだ。そこに「シンゲン」という名前が見えた。
「えーとなんだっけ、プロテインじゃなくて、ドイツの辺りに昔にあった王国、ププロ」
「出てきませんね。お年ですか」
「うるさいなあ。君はまったく分からないじゃないか。トキは漢字にした方が、君が分かると勘違いしたようだな」
「トキさんじゃないと思うんだよねえ」
「そうなの?」
思わず「シンゲン」と言いそうになるが、AZからの攻撃が怖くて口を噤んだ。
「君は俗ではないよ」
「わあい」
ゆう子は嬉しそうに笑った。コロッと変わるその笑顔が突き抜けてかわいらしい。
「未来の世界の君主ってことは、日本だけを統治しているんじゃないのかな」
友哉がそう呟くと、ゆう子はAZで調べてから、
「普ってなに?」
と首を傾げた。
「普みたいな王国になっているって」
「女が少ないんじゃ、見るものがないね」
「女は嫌いなんでしょ」
「見てるだけなら最高にかわいいよ」
「猫を見るみたいな言い方。そんなことばっかり言ってると女性差別主義者って思われるよ」
「かまわない。そんなくだらない議論をする俗世とは関わらないから」
ゆう子は含み笑いを見せ、
「わたしとは関わってるね」
と言った。
「いっぱい擦ってもらえるなら、この病気、バンザイだ」
「かわいいなあ。そこは好きだよ」
「どこか嫌いなの」
「どこも嫌いじゃないよ。光の治療は短時間のようだ。ガーナラだと生薬の成分がしばらく効くはずだが」
「光でも耐性ができるかどうかわからないけど、一回くらいではそんなに変わらないみたい。ガーナラの治療の場合、女は病気が治った後、ガーナラは排泄されるんだって。あくまでも男性のクスリ。誰かを治療するのも男性らしい。女が少ないから、あまり仕事をさせないのかな」
「トキが日本人が未来の世界では一番偉いのか」
「今でもノーベル賞、取りまくってるじゃん」
ゆう子が楽しそうな顔をした。会話が面白いようだ。
「わたしたちしかできない話だね」
やはりそう言う。しかし、急に顔を曇らせて胸を擦り出した。パニック障害だろうか。
「ペラペラ喋るからだよ。落ち着いて、たまに深呼吸をしていないとだめだ」
友哉がそう言って背中を擦ると、ゆう子はとても幸せそうな顔を見せた。
「ハイブリッドのロボットって、かなり強いと思うぞ。生身の人間で勝てるのか。あのトキのような生身の人間だ」
「AZに出てこないの。その辺りの詳細は」
「わざと弱いハイブリッドでも造ったのか。あ、そうだ。美女がほとんどいないって言ってた」
「日本人の美女だと思う。わたしもじかに聞いたけど、その理由は教えてくれなかった。トキさんは純潔の日本人で、トキさんを護衛している若い男の人と側近たちは日本人。あとはほとんどの人が混血と移民の外国人だって言ってた」
「ロボットくんとの戦争があったらしいよ。トキさんたちの前の時代に」
「ほう。ロボットが感情を持ったんだな」
「ハイブリッドロボット」
「ハイブリッド? まさか」
「うん。人間とロボットコンピューターのハイブリッド。それでロボットだけの社会が出来て、そこから人間社会に侵攻してきたらしい。その時、世界を統治していたのは女たちだったんだよ。その戦争が世界の人口が減っていた原因のひとつだって」
ポーランドからずっとそうだ。行儀が悪いのにスカートやショートパンツばかり穿いている。ジーンズやパンツを穿かない理由も、「女は足をだしてなんぼ」と即答した。しかし、友哉が真っ青なスリムジーンズの女の子が好きだと言ったら、「じゃあ、それは穿くね。あなたも黒ジーンズはやめて青いのを穿いて」と笑った。
「街に医者がいないのか。未来の世界が本当ならがAi支配しているのかと思ったが」
友哉がソファに座り、テレビを背をしたゆう子は床に座布団を敷いて座っていた。交際期間を経て同棲を始めたカップルという様子はなく、セックスの時もどこか売春しているような愛のないやり方で、それが終わるとこうして距離をとっている。そしてゆう子は余計に肌を露出する女だった。今もスカートでパンチラなっているから、友哉は目のやり場に困っていた。
トキさんの国は、ストレスはほとんどなく、皆リゾート地にいるように暮らしているらしい」
「だからストレスに関する生薬が少ないのか」
「うん。今、作ってるとか書いてある。わたしたちに持ってくるってことかな」
二人はソファを挟んで、向かい合って座っていた。
「腕力を使う。つまり戦う。誰かの病気やケガを治す。それで友哉さんの血圧が下がるの。トキさんの世界ではそんなことにはならない軽度のガーナラを一回使いきりでは使用しているらしいよ。ほら、友哉さんのガーナラには動植物の名前がいっぱいあったでしょ。それが少ししかないガーナラだって。町には病院がなくて民間療法的に、個人が病気を治療するらしい。女性がいなくても、その程度だったら、寝ていれば回復するんだって。
◆
成田空港から横浜の自宅マンションに一回戻った友哉は、着替えや電気カミソリなど男の生活必需品だけを鞄に詰めて、新宿の奥原ゆう子のマシンョンに行った。
それにしても、疲れがひどかった。旅行の疲れとは違い、まるで寿命がきたような恐怖を伴う疲れだ。
まるで極度の鬱だ。
と、悩ましく頭を押さえていた。
「友哉さんはもてないよね。大人すぎて」
「心配無用。事情があって、もてたいと思ったことはない」
「ぼーぜん」
精神状態を口に出して教えると、友哉は、「面白い女だな。そこは好きだよ」とまた笑った。爽やかでなく、相変わらず小さな微笑だった。
「俺が嘘を吐かない男だって気づいているよね? 偽善が大嫌いで、だから俺に衝撃の片想いだって俺は分析してるよ。あ、そうそう、トキにもいろいろ教えようとしたけど、嫌そうに断られた」
「あ、当たり前ですよ。未来の時代の君主様ですよ」
「だけど、君は女だから」
「女だから?」
「男の言うことは聞かないよね」
友哉がとてもおかしそうに笑ったのを見て、ゆう子はまた仰天した。
真剣に話していても、ゆう子はこうしてふざけた言葉を作る。だけど、真剣な男が好きで、ゆう子の内面の生真面目さと表面の不真面目さが、彼女に彼氏を作らせない原因になっているのだと、友哉は分かるようになった。
ふざけた口調は自然なんだな。子供の頃に読んだ漫画か何かの映画の影響だろう。
友哉は彼女に気づかれないように微笑んだ。
「本当のとか、本物のって言葉が好きなんだ。本物の愛を得られるようにしておいてあげるよ」
ゆう子は目を丸めていた。何を言っているのかさっぱり分からないと思い、それを口に出してしまう。
「偽善者が嫌いなんだろ。嘘は吐かない男が君を抱くようにしてあげるって言ってるんだ。簡単だろ」
「そ、そんなことができるの?」
「できるよ。俺から学べば」
「だ、だ、大先生ですね」
もしお金があったら、君と住める大きな家を買うよ
(Yoursong エルトンジョン/バニートーピン)
「君を好きとも愛してるとも言ってないのにセックスをしている。とても悪徳だ。そう言ってるんだ」
「好きじゃないんだ。まだ…」
項垂れてしまう。
「俺もいい加減な男だ。一緒に本当の愛を探そうか」
「え?」
ゆう子は思わず顔を上げた。
南の島で暮らさないか。すべてを捨てれば新しくなる。生まれ変われるんだ。
女に媚びない男は古いらしい。だが、彼らは優秀だと聞いた。
「なんかヤバいことを訊いたみたい。娘のわけないか。また、今度、尋問するね」
友哉がまだ疲れが残っているのを見て、ゆう子がうっすらと笑った。
「お、女で悪いことをしているとお金が入ってくるんだぜ。早速、入ってきたみたいだ。早く成田に着かないかな」
誤魔化すように悪ぶった口調で言うと、
「さっき、愛とかなんとか言ってたのに」
と、ゆう子は肩を落とした。
「あ、トキさんにもらったあなたの夢の映像のことね。基本的に、霧がかかっているような映像だから顔ははっきりと見えないし、そもそも愛人なのかセフレなのか恋人なのか分からない女がけっこう出てきます。でも」
「でも?」
「北の旅館で一緒に死にたいって言ったのは、娘でしょ」
「え?」
ゆう子の言葉が思わぬものだったのか、友哉が体の動きの一切をとめてしまった。
と、やはり懐かしむように言った。
「じゃあ、最初は付き合う気がなかったのね」
「そうだね。ブスなら海外に逃げてたよ。君と同じくらいの美女だった」
「美女だってことは聞いた。本当にこんなにかわいかったんだ」
ゆう子が自分を指差して言うと、
「なんでそれは知らないの?」
と、友哉は、笑わせようとしたゆう子の仕草を無視して訊いた。
「昔の小説やフランス文学にあるね」
「そう。女がしつこいんだ。あなたの体液が欲しい、体が欲しいって。お金はいらない。結婚しなくていい。あなたが欲しい。それだけだ。俗から離れた夢のような世界だ」
「遠くを見て言った。元カノもしつこい女だったでしょ」
「またか」
彼はうんざりした顔をしたが、どこか口にしたいようで、
「しつこかった。俺が執筆している横で、スマホを見てるんだ。ずっと座ってて」
君は恋愛をする気がないと言っている俺にしつこい美女。セックスで始まったけど、たぶん、これを真剣と言うから、突然いなくなることはないが、本当は、真っ白な離島の砂浜で一緒に並んで座っているだけの愛を夢に見ているのがベストで、あまり生活の匂いがする夢は持たないことだってオチだ。セックスだけなのも究極の愛に発展するが、それは文学的な世界だ」
「たぶんこれ、頑丈だけど、わたしの悪戯についてこられないよ。保証書がないし、不安だな。続きを聞かせて」
「続き? えーと、俺は寂しがっていて簡単に抱ける君を簡単に好きとは言わない。
「クリスマスの季節になって寂しくて男を作る女たちに興味がないんだ。俺が恋愛をする気がないって言ってるのに、しつこくしてくる女には興味があるよ」
「それはわたし。すぐ口の悪い哲学をフォローするね」
ゆう子が苦笑いをした。
「突然、いなくなる男でもない。常に、居場所をお知らせするよ。そのAZがなくなってもね」
ゆう子が、AZを出したり消したりして遊んでいるのを見て、半ば呆れながら言った。
「そう、君のような美女が男と寝てはまた男を替え、その男に力がなくなると、また別の男と寝る。悪びれた様子もなく。元彼と俺との隙間が何年か知らないが、トキの話がなければただの淫乱だ。俺は寂しそうな君をタダで抱いていて、大満足だ。それは俺からの本当の愛じゃない。なのに君は足を開く。そして俺が突然いなくなった時に、君のさっきの夢は間違いだったと分かる。だから、その夢はやめておけ」
「友哉さんは、女にわざと嫌われようとしてない?」
つまり、無能な男ほど、自分のアパートやマンションで簡単に女と同棲を始める。女のほとんどが結婚をしたがるから、結婚生活に似た部屋を提供するのが無能な男の手口で、それに女は騙される。いや、分かっていて、足を開く女がほとんどだ。産業革命以来ね」
「わたしに対するお説教ですね」
どこかで愛になったとしたらそれは途中、どちらかが命をかけた姿勢を見せたか、一回、泥沼になって別れたか。それくらいしか、セックスで始まった付き合いが愛に変わることはないんだ。そもそも、もし、結婚という制度がなければ、男は自分の部屋に女を呼ぶのはリスクを感じる。特に、利口で優秀な男は自分の部屋に迂闊に女は入れない。悪女かも知れないし、男の部屋は城だ。
「寂しい気持ちが恋心を上回っていて、それほど好みではない男ともセックスをしてしまう。君は違うとして、女は寂しくなると、男を作る。男は寂しそうにしていて簡単に抱ける女に好きだと嘘を言う。俺の部屋に来いよ、それでイチコロだ。それは100%愛じゃない。二回目以降の恋愛はほとんどがそう。薄々、分かっている女は賢明だが、愛よりも生活や友達の目が大事だから、その幸せに見える生活を重視して、寂しい女に付け入った男とやがて結婚する。
「女は生活を求めて男と寝て、やがてそれが本物の愛じゃなかったと分かった時には、もうおばさんだ」
「で、結婚した男性はお腹の出たおじさんになっていて、なのに必死に若い子と浮気して、ギャンブルをしてお酒ばっかり飲んでる。地震がきたら真っ先に逃げちゃう」
「なんだ。分かってるじゃないか。若い頃の始まりの付き合い方が生活を求めるために、セックスをするからだ。始まりに愛がない」
「あなたに恋をした」
「それは分かった。だけど具体的なその夢は、俺がもしいなくなった時に道に迷うぞ」
「さすがに作家さんはしつこいですね。黙って感動してればいいのに」
ゆう子はあからさまに苦笑いをしたが、首を傾げたまま口を開かなくなった。
「愛にしておけ。夢は男性を愛することって言うんだ」
友哉が促すように教えると、
「なんの愛? 具体的に口にしたらだめで、それは抽象的すぎる」
と、さらに首を傾げた。
と言った。その暗闇には彼女の嫌いな人間はいないのか、なんの風景もない黒色をずっと見つめていて、目を逸らさない。心配になった友哉は、
「本当に俺との三年後の夢しかないのか」
と訊いた。ゆう子は、唇についた精子とティッシュの粕を舌なめずりをするようにもう一度、舌で拭った後、
「当面はあなたとずっと一緒にいること」
と言った。それから唇の乾燥を防ぐためのリップを塗った。
「いないね」
「もしかしたら、本当は彼女がいるとかなら仕方ないけど」
「いないよ」
「だったら、普通、来るでしょ。セフレは嫌。だってワルシャワで仲良しになった」
「そうだな。ケンカしたのは最初だけだ」
ゆう子は彼のその言葉を聞いて、髪の毛をかきわける仕草を見せながら笑みを浮かばせた後、飛行機の窓に目を向けた。真っ暗で何も見えない空中を見ながら、
「人間の本質を一言で言うと偽善で、人生を一言で言うと寂しい」
「衝撃の片想いだから」
ティッシュで唇を拭きながら、彼女はそう言って茶化していたが、どこか寂しそうで、
「部屋にきてくれませんか。することがないし、寂しいし」
と、正直に心情を吐露した。
「もうすぐ死ぬかも知れないのに、のんびり部屋で座っているの? 必死ですよ。まさか、奥原ゆう子がセフレみたいに遊んであげるから部屋にきてって言って、お断りする無職の男性がいるの?」
AZで友哉の血圧や心拍数が測定できるようになっていて、帰国中の機内での血圧が、約200になっていた、通常のひどい高血圧だが、テロとの戦いの最中に300以上に跳ね上がっていた友哉には低くなっている値らしく、それを見たゆう子がCAの隙を見て、口を使ってくれて、友哉はその献身ぶりに驚いた。機内に漏れる精子の匂いを気にして飲み込んだのを見て、
「どうしてそこまでするの?」
と訊いた。
と彼を心配した。ゆう子はそう言って、友哉を自分の部屋に引き入れたのだった。
お互いの体調を心配する呼吸が合った、と友哉は思った。
初めての経験かも知れない。トキは奥原ゆう子が俺に相応しい女だと言った。明るくてよく喋るからだと。そこじゃないんじゃないか。二人とも病弱なのがよい相性なんじゃないか。それに、三百億円に興味を示さないなんて、庶民と違ってお金を持っているからなのか。
友哉はそう思い、苦笑した。
価値はこちらにある。そして現実も。銀行にもし一兆円、使える俺の金があったとしても、先に観察するのは札束の山ではなく、この不思議な女優の方。
そう機内でずっと考えていて、成田に到着しても銀行に向かう気はまったくなかった。
それに彼女のパニック障害が心配になり、空港でさっと離れるのはどうかと思っていた。彼女は彼女で、
「メンタルが弱ってるみたいだから、わたしの部屋においでよ」
君の若さと美貌があれば不可能はない(ドリアングレイ[ワイルド著])
第三話 ゆう子のマンション
ポーランドから帰国して、トキからもらったお金をすぐに銀行から取り出しに行く予定を変更して、友哉は、ゆう子のマンションで滞在していた。報酬の多額のお金が本当に銀行にあるのかないのか気にはなったが、なければないでテロリストや凶悪犯との戦いは放棄。それでいいと思った。
友哉は目の前の奥原ゆう子にもっと興味があった。銀行に数百億円あったとしても、それよりも奥原ゆう子という「女」を見ていたかった。
どこかに嘘が潜んでいてもかまわない。利用されていてもかまわない。ずっとそんな人生なのだから。
人気女優が現れたのは出来すぎだったが、もともと高い報酬があった。
未来の世界のためにも、他人のためにも働く気はない。しばらくは風に流されていくだけ。それが友哉の今の考え方だった。
第三話『ゆう子のマンション』に続く
楽しませてもらおう。無心でいないといけない。愛した女は必ずいなくなる。
ゆう子が知っているように、結婚も失敗していた。ゆう子がどんなに頑張っても、結婚願望ももうない。
ただ、車椅子の生活から救ってくれたトキへの恩は返さないといけない。哀しみは拭えていないが、それくらいの気骨は残っている。与えられた仕事を淡々とこなし、仕事が終わったら、報酬のお金で南の島で暮らしていこうと考えていた。
また自尊心が欠如した言葉をつくったが、彼女の体が感じた淫靡な声が漏れた瞬間の言葉で、悪くない響きだと友哉は興奮した。
ゆう子のセックスの声は処女性はいっさいなく、本能に従ったような快楽の声だった。うるさいわけでもなく、ただ、ただ、淫らな声であった。
その動作、足の開き方、舌の動かし方にいっさい清潔感や品はなく、それは予想通り。なのに真っ白な肌は美しく輝き、奇妙な出来物もない。柔らかな乳房、丸いお尻、潤った膣。何もかもが満点の肉体だった。
友哉に跨っていたゆう子は大袈裟に体の動きを止めた。
「さすが、レベル2の男。悪い。わたしが友哉さんを裏切ろうとしたら、薬漬けにしてセックスで離れないようにするのね」
「そうだ」
いつものように本気も冗談とも取れない返事をする。
「いいよ。わたしはその程度の女で。モルモットにして」
「勉強してるの?」
「トキに教わった。避妊とそれ。なんだ。君の持病の治療のためか」
「そうだったんだね。ありがとう。うん、気分がいいから、不思議だった。治してくれたんだね」
「一時的な処置だよ。たぶん、光だけの治療はすべて一時的だと思う」
「じゃあ、ずっと気持ちよくなる大麻系も試したいな。あなたの体に中にあるの」
「この仕事が続くなら、いろいろ試すよ。君が裏切らないようにクスリ漬けにしたいね」
「君はパニック障害の持病があるから、こういうのは慎重になった方がいいよ。大麻が禁止されているのは政治的な問題だが、パニック障害や鬱病に逆効果という報告もあるんだ」
「パニック障害を治して」
「昨日、ちょっとやってみた」
「どうやって?」
「大脳辺縁系の扁桃体というものから、妙な指令が青斑核に伝わらないようにそこを光で刺激してみた」
乳房が大きすぎるとさかんに言うが、動物的な巨乳ではない。Cカップだろうか。体はどこにも骨が出っ張っていなくて抱き心地はよくて、それだけをゆう子に教えたら、とても喜んでいた。
友哉は、「こんなに気持ちいいセックスは初めてだ」と大げさに喜んだ。
「大麻なのかな。わたしにもそのクスリを」
「だめ。ますますストーカーになる」
「なりたいから、そのクスリを入れてよ」
二人は、初めて結ばれた。
ブラも外したゆう子は、「デブは嫌いだよね」と、目を伏せた。
肉付きは良いがまったく太ってはいなくて、美人の定番のセリフだった。
「おっぱいがでしゃばりすぎてるよね。性格と一緒で。そういう女の子、あんまり好きじゃないでしょ」
そんな言葉をさかんに作っていたが、友哉は、うんうんと、頷いたり、首を振ったりして相手にしなかった。リングの力で酩酊しているような感覚がある。
「今、大麻のような効果で気持ちいいんだ。喋らないでくれないか。嫌いな女は行儀の悪い美女じゃない。シャワーを浴びた後に、色気のない話を始めたり、何か食べたりする美女だよ」
「す、すみません」
途端に殊勝になって、友哉に身を任せる姿勢も作る。
「結局、俺がリードするんじゃないか」
と言うと、ゆう子は頬を朱色に染めた。
「それもかわいいからいいよ。あのね、俺にそんな偉そうな権利はないんだ。おじさんだし、病人みたいなものだから、君のような美女を嫌いになるかならないか言う権利も考える権利もないんだ」
「そんなに控えめなの?」
「ブスには控えないよ」
「女は顔なんだね」
「面倒臭いなあ。君は顔で仕事をしているのに」
友哉が呆れ返って、ゆう子の腕を掴んで、ベッドに引っ張り込んだ。
ゆう子は、友哉が自分のことを考えているのに気づいたのか、
「嫌いになった?」
と、泣き出しそうな顔をして言った。
「パニック障害では嫌いにならないよ」
「夜中に飛び起きたりする」
「俺もよく起きる」
「行儀が悪いの」
今でも恋着している元彼が男の匂いをあまりシャワーで消さなかったのか、洗っても消えなかったんだと分かる。ティッシュに出した昨夜の精子は捨ててあったが、それにも元彼によってできた如何わしい過去がありそうで、分かりやすい女だと思った。
分かりやすい女が好きだけど
きちんと自分の話をする女性。話をしなくても、無意識にばらしてしまうこの、奥原ゆう子のような女性が友哉の理想だった。容姿やセックスではないのだ。
「まあ、加齢臭が出る歳だけど、臭いってあまり言われないよ」
「うん。びっくりした。でもそんな加齢臭のことじゃなくて男性の汗の匂い」
「夏は普通に臭くなるよ」
「うん。それの方が安心するかも」
「そうか。君のシャネルもない方がいい」
「香水は嫌いなのね。うん。そういう男の人、多い」
「嫌いじゃないよ。どちらかと言うと石鹸の香りの方が女らしさを感じる」
りすると発作が起こるから、ゆったり、のんびりした方がいいのに、君がセックスを急ぐからじゃないのか。ソファにゆったり座ってるのも見たことがない」
と言った。
「うん。ありがとう。ソファに座るよりも床が好きなの。あなたの無臭にびっくりしただけだから」
「無臭?」
「男の人の匂いがしない。石鹸の香りもあまりしないから無臭なんだと思って」
おでこに手をあてて、顔を強張らせて、そしてそわそわしている。床にしゃがみ込んだから、今度はお尻の様子が艶めかしい。肌を隠す恥じらいはなく、セックス経験に対する恥じらいがあるようだった。
ソファに座って、両膝を整えて座る落ち着きがないからパニックになるんだと思い、
「そんなにセックスの経験のありなしを口にしたくないの? 二十歳くらいの女の子じゃないんだから、気にしなくていいよ。それにパニック障害は頑張すぎたり、時間に追われた
ゆう子は友哉からさっと離れて、深呼吸をした。
「お互いおかしいな」
「友哉さんも? わたしを奥原ゆう子ってことは忘れて、ただのラブドールと思っていいのよ。本当はそんなの嫌だけど、とりあえず慣れるまでよ」
「少しは慣れてきたけどねえ」
「おかしいな。パニックでセックスができないことはないはずなのに。あ、セックス経験はほとんどないよ。ああ、どうしよう。なんて言えばいいのか」
「じゃあ、ブラを取れよ」
「おっぱいに自信がないから着エロで!」
筋肉質な友哉の体に唇を這わせたゆう子は、また「幸せだなあ」と、心底、嬉しそうな表情を作り、友哉を驚かせた。
「二日前に出会ったばかりだし、俺はおまえと今は付き合う気はないぞ」
プレッシャーを感じ、念を押していた。
「分かってるよ。うるさいなあ。でも、今はってもう、なんて優しいの。惚れちゃう一方よ。んー、だけどまた気分が悪い」
「友哉さんは洋服フェチみたいだから、一日にパンツや部屋着を何回も替えますね。好きな女を見ているだけでも、体力がつくらしいから」
「好きな女?」
「タイプじゃない女で元気にならないでしょ。ブスとか。そういう意味!」
「怒ると怖いね。ずっとブラは外さないけど、なんで? 乳首が黒い?」
下世話な物言いで笑うと、「乳首が黒い? なんてことを言うのよ。黒くないよ。なんで急にエロオヤジ? クスリを間違えたんじゃないの」と、ゆう子が呆れた調子で言った。
今日はずっとグリーンの短めのスリップを着ている。下着はさっきの水色ではなく、また白。少々一か所にとどまらない落ち着きのなさがあり、冷蔵庫の前に屈んだりすると、白い下着がチラチラ見えていた。それを見て、友哉もシャワーを浴びに行くが、「セックスをする合図じゃないぞ。きっと血の臭いが残っている」と告げてからバスルームに歩いた。シャワーを浴びて戻ってくると、彼女はなぜか棒立ちでいる。あまり座らない女だと、友哉は苦笑した。
「光だけで気持ちよくなるの?」
「光合成の応用くらい、トキさんの時代なら簡単でしょ」
「ほうほう。光合成まったく分からない」
けれどリングを光らせるために、少しは血圧を使うはずだから、今、疲れなかったのは彼女のエロチシズムが効いているのだと、友哉はわかった。見ているだけで十分な澄んだ湖面のような美しさが彼女にはあった。
ゆう子が戻ってきた。
リングは緑色に光り、その光は素早く友哉の頭に移動した。友哉はうっすらと笑みを浮かばせた。
「気持ちいい。ストレスに対応していないって言っていたのに、これは違うのか」
すると、ゆう子がリングの通信機能で、
「友哉さんの体の中に大麻もあると思う。でもストレスのために入ってるんじゃないと思うよ。セックスのため。それにただの光だけかもしれない」
と答えた。
少し怒ったようだが、彼女は痴女のような気配は持っていた。セックスの時はサディストなのかも知れない。友哉は、ぼんやりとそんなことを考えたが、リングを使った治療や薬物の投与が気になっていて、ゆう子の性格のことはいったん脇に置いた。
このリングを利用した光や体内の力はそれを些細な事に使うとどれくらい、疲れるのだろうか。友哉はそんなことを考えながら、左手を胸にあてて、「気持ちよくなりたい。カンナビナイド受容体を刺激してほしい」と念じた。
リングを見つめながら口に出して言う。
自力で抱く気になれないのなら、未来の力の『光』に頼ろうと考えた。
「いいですよ。それで疲れたら逆レイプして元気にするから」と、頭の中で聞こえた。
「もっと優しくできないのか。まるで肉食女だ」
「肉食なんて言われたことはない」
友哉は神妙な面持ちになり、半ば自分に呆れ返った。
奥原ゆう子というブランドに、まだ緊張しているのか。泣いていたから、優しくしよう思ったのに。確かに今は恋愛はしたくない。だけど、優しくしようと考えると気分が悪くなるんじゃ、人間失格みたいだ。
「自分に気持ちよくなるクスリを与えてもいいか」
友哉はしばらく苦笑いをしていたが、
本当に彼女が三年後に死ぬ運命なら、それは止めないとだめだ。例えば事故や事件に巻き込まれるのなら、この力でなんとかなるかも知れない。
と神妙に考えていた。しかし、シャワーを浴びている音を聞いていたら、また心臓の動悸が激しくなり、息苦しくもなってきた。
「すまん。その。死なせないよ。ちゃんと守っているから」
と言った。
「ほんとに?」
ゆう子はあからさまに機嫌がよくなって、
「やったよ。お芝居成功。恋人兼、秘書確定」
と笑って、飛ぶようにバスルームに走っていった。
「し、芝居だったのか。さすが女優」
「知らないよ。あと三年でわたしの人生は終わりなんじゃないの。つまり死ぬんだよ」
ゆう子がそう言い放った。まさに焦燥している。
「死ぬ? なんで」
「知らないって。だけど、三年後のある日に、わたしの記憶は消えてなくなる」
「病気? 事故?」
「知らないし、言いたくない」
涙ぐんでるゆう子を見た友哉は、
トランの今日かも知れないって出てくるの。日本での事件ならもっと正確に覚えていて、その場所に行けそうです」
「覚えている?」
「そうです。身近な事件なら、発生した時間までも覚えているかも。わたしの家の近くで起きた殺人事件とか」
「三年後の君から記憶を取ってきて、今、見ているってことか。なんでなんでも三年なのかな」
「AZが判別するから、それをリングに転送するのよ。わたしがいじらなくても、友哉さんのリングに転送している情報や力はあるの。全世界の人間のデータが入っているから、相手の性格と勉強してきた知識、思想でも喋っていることをある程度は判断できるんだと思う」
「ところで、そのAZに出る事件のデータは自分の記憶だって言ってたが」
後回しにされていた疑問を、唐突に切り出すと、
「また説明するの? もう疲れた」
「自動通訳機能じゃないのか。相手の口の動き方、表情、仕草、周囲の状況、周りにある物などを見て、何を喋っているか俺の脳が判断するんだ。じゃあ、相手はどうして俺の日本語が理解できるんだろう」
「外国人が近くにきたら、リングから同じ力を送るみたい。鏡の原理とか書いてある」
「こんにちは、と言ったら、相手も、こんにちは、と言う。その意識を反映させる、恐らく無限に。それで会話を成立させるのか。すごいな。このリングは相手が日本人か外国人か判別もするわけだ」
「あれ? 俺はポーランド語を理解できたけど」
「え? わたし、英語しか喋れないよ。ポーランド語、分かるの? どうして?」
ゆう子が、またAZで調べている。
「なんかよくわかんないな。別の国では暗闇では危険な仕事はしないようにって書いてある。友哉さんが日本語と少しの英語しかできないから、相手の言葉が分からなくなるからだって。ああ、遠くの人の言葉も分からない時があるって。未来の技術については説明を割愛してあるんだ。長くなるからって」
◆
サンドイッチがきた。
客室係りがコンシェルジュを兼ねているのか、ルームサービスを頼んだだけなのに、「日本人が好む食べ物を買ってきましょうか」と尋ねられた。ゆう子はやんわりとそれを断り、翌日の空港までのタクシーの件だけを告げた。
ゆう子は『ポーランド旅行に使う便利帳』という冊子を持っていて、その冊子を見ながら、ポーランド語と英語を使っていた。
「どこの見た目?」
「お互い美人だけど、君は個性的で知的な美人。あいつは整った顔立ちの美人で童顔。あとは胸かな」
「ああ、その女もおっぱいが小さいのね」
ゆう子が口を尖らせると、友哉がまたクスクス笑った。
「普通に笑う男のひとですよね。ま、女の子に嫌われるのはきっと変態だからでしょ」
ゆう子がそう苦笑いをした。
「その彼女のこと、相当大好きですね」
「もういない」
「否定しない。わたしはどうしたらいいの?」
「昔、付き合っていた恋人を別れたら嫌いだと言って、新しい女を喜ばせるのか。そんな悪趣味はない。あいつは理解者だった。俺を理解しようと必死になっていた。君は信じてほしいと言った。似ているよ。見た目はまったく違うけどね」
友哉が、くすりと笑った。
「その彼女はどうしてあなたと別れたの?」
「さあね。最後に会った時に、めっちゃ笑っていたからね」
「めっちゃ?」
ゆう子が目を丸めたところで、
「おしまい」
と友哉が言って、ソファから離れてゆう子に背中を向けた。窓の外をじっと見ている。
「そうか。不倫していた女だ。あいつがいなくなって、それから俺はただ、休みたいと考えていた。君が休みたいと思っていたようにね。夢のすべても無くした。その不倫相手が誰かは律子にはばれてなかった。だけど、彼女が俺の洋服を洗濯していたから、洗剤の匂いでずっと同じ女が俺の世話をしていたのはばれていただろうな。入院中、律子に離婚をされて、娘とは会えなくて、その恋人は失って、なんと足は動かない。その人生になんの希望があるんだ。それが突然、こんな体になった。健康になったのか、もっと不健康になったのか分からないが、気持ちは変わらない。ただ、のんびりしたいだけだ」
「奥さんのことじゃないですね。成田とかで律子って口にしていたから」
「いつまで続く尋問かな。トキにもされたぞ」
友哉はそう言うが、微笑んでいた。
「トキさんにも? 皆、友哉さんに厳しいんですね」
「自分で言ってるよ。じゃあ、優しくしてくれ」
「わたしの疑問に辛くならない程度に答えてくれたら、三年間、ずっと優しくする」
「分かってますよ。そこに片想いなので。結局、意固地にかっこよすぎるから、もてないんだ。女の子は急ぐからね。その温度差よ」
「発作が起こった時に、誰かの名前を言っていたかな」
「いいえ。あいつって」
「あいつか。彼女の名前を口にすると、貧血が起こるような感覚になる。きっと発作を助長するから、言わないようにしているんだ。どうだ、正常だろ。俺が俺のお医者さんだ」
と言いながら、友哉を指差した。友哉は照れる様子はなく、むしろ、表情を曇らせた。
「そんなにわたしがタイプじゃない?」
「違う」
即答すると、ゆう子はほっとした表情を見せた。
「女を愛すのをやめた決意をした直後に、突然、好きだと言われて、それが美女でもはしゃぐような、ふらふらした男じゃない」
「ない。なんにも」
「それは異常」
「君には夢があるってことだね」
「ひとつ叶った。少しの間、女優業を休むこと。本当は海外でのんびりするのが理想だったけど、このタブレットが楽しいから、マンションでこもっているのも悪くない。もうひとつは三年後にある人とお付き合いする」
と言った。友哉が答えないでいると、
「ごめんなさい。発作が出たばかりなのに。小説家の夢はないんですか。大作を書きあげるとか」
と、ゆう子は謝りながらも難詰するように訊いた。
「発作が出たのか。そうだな。少し取り乱したのは分かっている。恋愛や病院のことで気分が急に悪くなることも分かっている。だから、恋愛をする気分じゃないって話で、じゃあ、心の病を認めてることになる。つまり正常だ」
「正常ですよ。冷静なくらいに。で、夢は?」
「ずっと思っていたけど、気が強すぎると思う」
「泣かないからってふられたことがある」
友哉が笑うと、
「笑わなくてふられて泣かなくてふられて。女は難しいですね。もしかして、あなた」
ゆう子が、「友哉」ではなく「あなた」と言った。神妙な面持ちになっていた。
「気が強くて怖いもの知らずじゃなくて、夢も希望もない人ですか」
「あんな悲惨な目に遭ったことはないし、ビルが爆発するのをまじかに見たこともない」
と言った。
「自分はPTSDじゃないって主張して、周囲がPTSDだと判断したら、100%PTSDになりますよ」
「君の判断は?」
「PTSDです。程度は分からないけど」
「あと、三人くらいに言われたら認める」
ゆう子が水着の写真のことを聞きたいと思っていたのに、友哉が質問してきた。
「友哉さんがPTSDだって」
すると、友哉は不機嫌そうな面持ちになり、
「君は戦争映画を観たことがあるよね。女優なんだから」
と言った。
「あります。出演したこともありますよ。妙な比較はしないでね。時代が違うから」
ゆう子がけん制すると、友哉はほんの数秒、言葉を作らなかったが、
ただの骨折が違っていたのは、医療ミスなのか。大失敗や大トラブルが一気に襲い掛かってきたのか。成田から、何もかもやる気がなさそうだったのも当然で、わたしの誘惑、本当に嫌だったのかも。男性を誘って嫌がられたのが初めてで、怒ってしまった。
ゆう子が少しばかり反省していると、友哉が戻ってきて、ソファに座った。
「トキに俺の何を聞いたのかな」
だったら、それも奇妙だ。元カノが見舞いに来ないのは当たり前だ。それほど絶望することもない。幼少の頃の娘の水着の写真だとしても、「水着の写真」という言い方にはならないはずだ。「娘の写真」と言うはず。名前を言えない女性の水着の写真。やはり元カノか。
しかし、友哉にそれらを訊くことはできず、ゆう子はおでこに手をあてて、病室の様子を想像し推理をしていた。
それにしてもゆう子は彼の言った「水着の写真」という言葉が腑に落ちない。
彼女の水着の写真を持っていたのか。彼女はずっと前からいないはずなのに。トキさんからもそう言われていた。彼が嘘を吐くようには思えない。じゃあ、恋人じゃなくて恋着していた元カノなのか。
『ゆう子さんの時代の聖書という書物を読むと、神とは苦しむ者で、イエスは十字架に晒されています。また、悪しき人間を拷問にかけることにより、神の世界に向かわせるような傾向が読み取れます。友哉様は目の前で悪事を働く恋人を聖女にするために、苦悩されてきた。紀元の頃に友哉様が存在したら、元の恋人は拷問を受けていたかもしれません。もちろん、ゆう子さんの時代では頬をはたく程度です』
それでもDVになるもんな。そしてこれはシンゲンって人の話じゃなそうね。またそっぽを向いて、頭の中で呟いた。
分かりました。トキさん以外の名前を言わなければいいのね。
『交渉成立。しかし、奥原ゆう子のお喋りは信用できず、信用できず』
なんなんだ、この口の悪いタブレットは。絶対にこのシンゲンって奴の個人の感想だ。トキさん、もっと温厚で丁寧な人だったもん。
ゆう子がAZを睨み付けた。それにはAZは反応せず、別のテキストを浮かばせた。
PPKからの赤いレーザー光線が気にいらない政治家を仕留めることも可能なのだ。ゆう子は頭の中のその言葉はAZに向けずに、部屋の隅に投げるように呟いていた。
『奥原ゆう子から今の記憶を抹消。奥原ゆう子の承諾を待つ』
なに? 嫌だよ
ゆう子が思わずAZから手を離し、テーブルに置いた。「嫌だ」ともう一度言う。
『拒否。口外をしないよう約束』
入っているのだろう。それをまとめたのがシンゲンという人間。もし、このシンゲンという人間の意見も入っているとしたら、彼らが友哉さんを特別に崇拝しているばかりでもなさそうだ、とゆう子は考えた。
友哉様と書いているのも、怒らせないように気を遣っているのかもしれない。今の友哉さんが激怒すると、確かにまずいことが起こりそうだからなあ。
テロリストとの戦いを思い出し、苦笑いをする。
あらま。未来人、まさかの凡ミス?まあ千年くらいじゃ、感情の進化はないか
ワルシャワでいる時点では、教えられない名前とか事柄があるのか。そういえば、友哉さんの住所とかもわたしが成田に着いた途端に出てきた。
トキさんに、仲間がいたのか。しかもトキさんからの答えじゃなかった。当たり前か。一人でこんなものは作れない。このAZはきっとある組織で作ったんだ。トキさんが本当にトップの人間だとして、トキさんの意見とその部下たちの意見、そして友哉さんのデータが
そう訊くと、AZの画面から一瞬、テキストが消えた。友哉はゆう子がAZをいじっているのを見て、バスルームに向かう。きつけのためか顔を洗っている音が聞こえた。
AZの画面が再び淡く光り、テキストが浮かんできた。
『テキストを担当したAZのデータ管理者です。奥原ゆう子予想通りワルシャワ時間。シンゲン。トラブル。トラブル。非常事態。リセット』
え? 友哉さんの悪口の中にシンゲンってサインのような文字が見えたのよ。
『』
Imagine all the people Sharing all the world
(John lennon)
友哉さんは神?
『神様ではありません。怒りっぽいので』
ゆう子が笑うに笑えず、肩を落とした。もう一度、同じ質問をすると、『神様ではありません。女に甘すぎるので』と、また批判が戻ってきた。ふざけたわけではないが、同じ問いかけを続けると、女性問題の批判が矢継ぎ早に出てきて、その中に『シンゲン』という名前が見えた。
シンゲン? 誰ですか
友哉さんは異常に優しいんだけど?
『そのままの男性でいてもらわないと困ります』
困る?
『』
答えが出てこない。だが、こんな雑談のようなやり取りでは仕方ないと、ゆう子は思った。しばらくすると、次の一文が画面に浮いた。
『神の領域です』
病院の水着の写真は誰のこと?
入力で「水着の写真」と入れて、さらにAZに問いかけるように訊く。
『相手の女性のプライバシーに関わることで答えられません』
トキがリアルタイムで答えているように見えるが、実際は違う。膨大なテキストからの答えだ。
天井って病室の天井ですか?
『そのようです。詳しくは分かりません』
「成田じゃなくて、病院の廊下で待ち伏せしてくれたらよかったのに」
冷や汗をかきながらジョークまで言うのか。夢の映像の中の彼と変わってない。優しさの大安売りだ。これでは逆に、ちょっとしたことで傷ついてしまう。トキさんが与えた薬、本当に性格を変えたりしないんだ。
「ルームサービスで部屋に入ってくる女性は、レベル1だから安心してください」
ゆう子はAZを触って、そう教えたが、こっそり『原因』ボタンで、友哉のPTSDについて調べていた。
友哉は床に落ちていたコップを拾い、近くのタオルで水を拭いた。ゆう子は言葉を失った。
「大きい声を出したのか。すまない。誰も待ってないよ。奥原さんがいてくれてよかった」
少し声を震わせながら、また言う。ゆう子は彼を凝視していた。
PTSDのフラッシュバックの最中に、わたしに気を遣ってるの? 君でを君がに言い替えた。なんなのこのひと。
「うん。大丈夫よ。トキさんから聞いていたから」
そう言って微笑むと、友哉はゆう子のその顔を見て、
「あ、奥原さんか」
と言って、少し残念そうな顔した。
「病院で誰を待っていたの? 彼女?」
「え? す、すまん。君でいいんだ。すまん。君がいいんだ。これ、俺がやったのか。ごめんね」
「写真?」
「写真を落とした。水着の」
水着? 恋人のか。ゆう子はそう思ったが追求せず、
「足は動くよ」
と必死になだめると、彼ははっとした顔をして、部屋を見回した。
「す、すまん。病院かと思った」
悪い夢から飛び起きた人のような顔をしていた。
Web小説スマホ版の記号の歪み。やっと直し方が分かった
羽生善治永世七冠、おめでとう!
寒いから、竹富島の絵ハガキを部屋に飾った。
モーツァルトを聴いている。たまにクラシックが
聴きたくなる。
「ただの骨折じゃないのか。なんで一生、後遺症が残るんだ。このベッドの血はなんなんだ。おい、看護婦。黙ってないで、返事をしろ!」
ゆう子をちらりと見て、怒鳴った。
「友哉さん、落ち着いて!」
暴れていないが頭を抱えて、床を拳で殴っている。今度は、
「取れない。足元の写真が取れない。足が動かない!」
と喚き、自分の膝を拳で叩いた。
「地獄天井」
背中が震えている。
「あいつ、なんで来ないんだ」
PTSD? 天井ってなに? フラッシュバック?
ゆう子は近くにあったタオルで、友哉の額の脂汗を拭いた。水を渡すと、
「栄養ドリンクがいい!」
と叫んだ。ゆう子がびっくりして、冷蔵庫からそれらしい飲み物を渡すと、彼は一気に飲んだ。
「アウシュビッツと広島の話」
「作家は売国奴が多いか」
「左翼っぽい方が多いです。友哉さんは違うの?」
「右も左も興味がないよ。今、目の前の真実だけを見るのが俺の趣味だ。奴は地獄の中で地獄の処刑を受けた人たちが眠っている国で、観光客にも地獄を見せようとした。地獄の中で」
友哉はそこまで口にすると、急に頭を両手で鷲掴みするように抱えた。
「どうしたの?」
分からないことだらけだった。
今回の仕事は成功だったのだろうか。レストランの客は守ったが、レストランの外で死者は数多く出ていた。確かに、逮捕されることはないだろう。現場から忽然と消えてしまえば、撮影されていても、そのビデオが合成だと判断される。現実にホテルから一歩も出ていない事になっているのだ。友哉がそんなことをぼんやりと考えていると、
「作家さんなのに、愛国心があるのね」
とゆう子が言った。
「なんのこと?」
「そうみたいね。遥か未来の世界の君主を坊やという友哉さんもどうかしていると思うよ。友哉様って呼ばれていたとしてもトキさんがもし聞いていたら、怒ると思う」
ゆう子がくすりと笑う。
「坊やにやられるとは」
「また言ってる」
ゆう子が頼んだのか、テーブルの上にフルーツとコーヒーが置いてあった。それに加えて、たった今、ゆう子がサンドイッチとソーセージを注文した。ルームサービスが来る間、二人は何もせずにソファに座っていた。
頭重がする。遊園地?ディズニーシー。あの笑顔。感情だけで生きている純朴な。抱きしめると壊れそうなあの体。抱きしめたい…なのにいない…。ここは日本じゃないのか。どこだったか
「なんの戦争かは分からないけど、でも、トキさんが止めたような口ぶりだった」
「そ、そんなに偉い男なのか、あの坊や」
友哉が辛そうに頭を少し左右に振るが、ゆう子はそれに気づかなかった。滑舌も悪くなっていた。
美しさは認めているが、一目惚れをしているわけではなかった。恋人兼秘書と彼女は言っているが、恋人にする気持ちもない。
「わたしがあなたに恋をしているから。プロの女はあなたに恋をしてるの?」
「あ、ああ、そうだな」
言いくるめられてしまっている。
「戦争に使った薬か」
また、話しを変えてみる。彼女を傷つけたくない気持ちと、自分の体が油断すると死に至る恐怖で、友哉は冷静さを失っていた。
「料理はできないし、そういうデートは。すみません。したことがないです」
ひどく顔を曇らせるものだから、友哉は話を変えることにした。
「違う女じゃだめなのか」
「え?」
ゆう子があからさまに悲しそうな目をした。
「例えばだよ」
「違う女でも大丈夫ですよ。ただ、高級交際倶楽部の恋もしていない女で効果があるのか分かりません」
「君にまだ恋はしてないよ」
「君が謝ることじゃない」
「うん。だけど、なんかわたしと強制的にセックスしないといけないと思うと悪くて。わたしは」
ゆう子は一度言葉を飲み込んだ後、
「セックス以外にどうやって男性を慰めていいのか分からないから、だから最初はセックスだけでもいいんだけど」
と、神妙に言った。
「遊園地をデートをしたり、料理を作ったりするんだ。今は男が作るのが流行。だから女がすることはなくなった時代。戦争も内乱もないからまあいいんだが。なんて皮肉を言ってる場合じゃない。君はデートの仕方も知らないのか」
「いえ、何もしなければそこまで血圧は下がらないから普通に生活できます。一度上がった血圧が一気に下がると危険で、じりじりと下がっても辛いそうです。でもテロリストと戦うためにその強靭な体を使い続けるには、わたしが必要ってことね。AVの奈那子には敵わないけど、愛でなんとかするよ。ふふふ」
まったく笑えないぞ。足が治ったのに、なんだ、そのハイリスクは。
友哉はまさに愕然としていた。その様子を見たゆう子は、笑みを無くし、なぜか「ごめんなさい」と消え入るような声で言った。
「テロリストと戦った時は見てなかったけど、きっと400くらいに跳ね上がってるの」
「つまり、俺の今の体は血圧が300くらいが普通になっているのか。それが戦いとかで消耗して100になると、極端に下がって、ショック状態で死ぬ?」
「あ、まさにそうです。さすが、作家さん」
「女がいないと死んでしまうのか」
友哉の不安は収まらない。
と、ゆう子が笑って言う。
「俺の今の血圧は? 客室係りに簡易血圧計を借りてきてくれ。115が130くらいになって、それが90に下がったら死ぬのか。そんなバカな」
話を変えるように、力なく訊いた。
「AZで友哉さんの血圧を見られます。心拍とかも」
ゆう子がAZの画面を見せると、『佐々木友哉の体調』と表示されていて、血圧だけではなく、心拍数、体温様々な数値が出ていた。血圧が、なんと272、150となっていた。
「後で話し合いましょう。実際、AZの方が面白い。女がいなくて。つまり興奮しないままでいると、低血圧に陥って死んでしまうから、恋愛やセックスに貪欲になるって書いてある」
と教え、
「死ぬそうです。女が傍にいないと」
と、神妙に言った。友哉が呆然としているのを見て、
「あ、トキさんからの伝言が補足されています。友哉様の世界には女がいっぱいいるから、私は楽観しているって」
「ストレスがありそうだったけどな、あの男。ストレスがない世界で戦争があったのも妙だし。まあいいや、とにかくストレスには効果がない薬で、君のセックスの話は終わり」
「半年でAV女優並みになってやる。AV女優と付き合っていた男の人とやらなきゃいけない女の身になれっての」
「ならなくていいよ。無理にしなくてもいい。セックスの話は終わり」
ゆう子が即答したのを見て友哉が肩を落とした。
「正直に言うと興奮した。何しろ、奥原ゆう子だ。なのに、俺は力なんか出なかった」
「調べます。えーと、普通にストレスだってさ。ほら、わたしが下手くそだからだよ」
すねてしまった。
「この魔法の薬はストレスには効かないようだね」
「ストレスのない世界で開発されたからだって」
「昨日の君の愛撫が、今日の戦いに効いていた? 勃起と同じ原理ならそれはおかしい」
「昨日上がった血圧が、今日、極端に下がっていないということですよ」
「生薬なら長い時間は効かない。この時代の強壮剤なら一日くらいだ」
「はい。追加しないと、五年くらいで効かなくなってくるそうです。もし、友哉さんがなんにも食べないともっと早く」
「昨日の君の愛撫で俺が疲れた理由は」
「わたしが下手くそだから」
「確かに下着姿がかわいいと思った」
真面目に教えると、ゆう子も生真面目に、
「女のエロチシズムに興奮すると、友哉さんの体の中にある友哉さんの足を治療したその薬が毛細血管まで廻って元気になる。単純に血圧が上がるんです。恥ずかしくて言いにくいんだけど」
「まさに勃起と同じ原理じゃないか」
「そうです」
ゆう子が少しはにかんだ。
「それはトキから聞いた。精力がすごくなっている」
「そう、使用すると精力はともかく戦闘力もすごくなるから、結果、戦争に使ったようです。だけど女性を得られなかった男性は消耗して死んでしまうから使用禁止になったらしいですね。疲労したら性愛で回復するんです。友哉さんの血中にあるそのガーナラっていう薬がさっき一時的に減少して、今、わたしの下着姿を見てまた増えてきたんですよ」
「そうです。Kiss、セックス、エロチシズムで回復するようです」
「さっきみたいに倒れた場所では?」
「外ではちょっとトイレの個室に入ってやるしかないですね」
「どうしてそんな仕組みになってるんだ」
「トキさんの世界では、男性が何かの原因で筋力と精力を一時失ったらしいです。恋愛感情も乏しくなったために女性を欲しくなるように開発された薬らしいです」
「俺はブスは抱けない」
「だから、わたしがいないとだめなんだ」
友哉の正直な言葉に感化された、なんとなく呟いた言葉だった。
自惚れていると言いたいが、ゆう子はまさに絶世の美女だった。
戦国時代に武将の妻で「だし」という女がいたらしく、後にいろんな表現で美女であることを褒められていたが、きっと、奥原ゆう子も次の時代で、そう讃えられる美女だった。
「まさか、転送されたり、この指輪を使って誰かのケガや病気を治したりして疲れても、君が傍にいて、触ったりセックスをしたりしたら早く回復するっとことか」
友哉があからさまに首を傾げた。
「前日にセックスをしたからだって。フェラだけだったけど」
「意味がまったく分からない」
「これは新旧混在しているすごいシステムですよ」
ゆう子がそう呟きながら、そして想いを廻らせる表情になり目を瞑った。
「わたしが友哉さんの傍にいないといけない理由。部屋でメイクして待機していないといけない理由。友哉さんがその力を使えば、どんな女とでもセックスができる理由」
「すまん。だけど、このリングを使って痛みを取ったりしてもそれで疲れるんだから、有事の時に疲れが出た時はどこからエネルギーを得ればいいんだよ。ようは俺の血圧は上が115くらいだが、それが90くらいになってきたら、だめだって話だよな。黙って寝てるしかないのか」
「うーん」
「なんだ。まさか人を殺すと力が出るとか、疲れたら黙って殺されるしかないとか、絶望的な答えか」
「初めての仕事でストレスがひどかった友哉さんがさっき撃たれたのに平気だったのは、わたしのおかげみたいです」
僕の存在にはあなたが必要だ。どうしても必要だ。
(夏目漱石)
どんなに君が変態でも、僕は君が好きだ!
(なんのこった?)
「基本は友哉さんの血圧って書いてある。血圧が上がるとリングを通してそれに反応して、様々な物質が発生するそうです。血圧と関係ないのは拳銃だけで、拳銃の地核のエネルギーは拳銃の中に圧縮されて収められていて、拳銃の表面はロンズデーライト」
「ロンズデーライト?」
「ダイヤモンドよりも硬いやつらしい」
「それは溶けるんじゃないか」
「冷却装置が銃の中にあるそうです。当たり前ですよ」
私たちは二回生れる。一回は存在するために、
二回は生きるために。(ルソー)
ずっと女を守ってきたのに、疲れたの?と昔の恋人に言われた。疲れてないよ。
「生薬と最先端技術と物理学? 二重、三重に俺を守っているのか」
「どれも、友哉さんが疲れてくると、発生が遅れたり、効果が弱くなるそうです。健康体の時はどんな弾でもミサイルでも平気だけど、転送して疲れていたり、日常生活でストレスを溜めたりしていて、普通に疲れていても防御する効果が薄くなるみたい」
「個々のシステムは理解できるが、仕組みが理解できない。つまりスイッチはどこにあるんだ」
「俺はサイなのか」
「違いますよ。男の人は精力をつけるために、マムシとか飲んでマムシになりますか。血中にあるの。いろんなのが」
ゆう子はため息をついた後、
「どんどん出てくる」
とAZの画面を見せた。様々な動植物の名前が画面の表面に浮かんでいる。
も、友哉さんの体の筋肉も硬くなっているから、小銃やナイフくらいは平気のようです。それはプラズマではなくて、普通に筋肉」
「普通に筋肉? 筋肉が銃弾を弾き返すはずがない」
友哉が自分の右手で、左の二の腕を握った。ボクシングをしていたから綺麗な筋肉の筋が浮かんでいたが、人間のそれである。
「攻撃を受けたりして血圧が上がると、筋肉が死後硬直みたいになるそうです。人間の筋肉ではなくて、サイの祖先のって書いてある。気持ち悪い」
すでにテーブルの上に置かれてあるAZをゆう子が操作する。
「そうですね。リングが赤く光ったら、プラズマで体の表面を覆うみたい」
「プラズマ? プラズマの電磁波? 壁?」
「うん。リングの赤い点滅はレーザーパルスだからそれも兼ねているようです。ただ、今のように疲労が回復しないうちだと、素早くプロテクトしない。または、プロテクトするけど一瞬。プラズマが出たり、無くなったりする。だから、洋服が破れてるのね。それで
どこか泣きそうな顔に変わった。ゆう子は驚いて、
「そうだったんだ。ううん、初めての戦い、頑張ったよ。そのうち、使いこなせるようになるから。それに体は大丈夫ね。この時代の弾くらい弾き返すのね」
と言い、優しく肩を抱いた。
トキさんに信頼されたのに、裏切ってしまった気分なんだ。自分に失望してるんだ。
「そうかもしれないが、きっとまた条件付きだ。調べてくれ」
「至近距離から撃たれた」
「怖かったね」
「その時は怖くなかった。頭に血が上っていたんだ。レストランでは怖くてパニックになった。あの時、冷静に対処していれば被害をもっと少なく出来た。トキになんと言って詫びたらいいんだ」
「トキさんに?」
「俺なら、この銃を使いこなせるってニュアンスだった。だめだった。赤い光線が言うことを聞いてくれなかった」
いったんベッドに移動して、友哉は横になった。ジーンズの膝の部分が破れていて、ゆう子が気に入ってくれた赤いアウターにもアスファルトで擦った傷がいっぱいついていた。
「どこを撃たれたの? 血は出てないけど」
「撃たれたが、未来の力が弾いたようだ」
「良かった。本当に良かった」
ゆう子は泣きながら、友哉の体を擦っていた。友哉はゆう子が触る度に、気力、体力が充実してくるのが分かった。それに下着姿が窓から射し込む陽光に照らされ、まさに眩しかった。
こんなに変わるんだ。昨日まで適当な顔をしていたのに。それにあの遺言のような台詞…。昨夜はありがとうってあんな時に。
「おい、この疲労感はなんだ。心臓が止まりそうだ。一瞬、気を失った感覚があった」
「回復まで二分ほどです。仮眠は約十二秒。でも戦った分、もっと疲れているかも知れません」
ゆう子は彼をなだめるように背中を擦った。友哉は自分の体力が戻ってくるのが分かった。
「全身だ。あの野郎、ぶっ殺してやる」
友哉の怒りは収まっていない。不甲斐ない自分への怒りもあった。
「レストランの防犯カメラから見た。奴らは死んだよ」
「仲間を探し出して、皆殺しにしてやる。ふざけやがって。世界遺産を狙ったテロだ。アウシュビッツも広島も長崎も知っていた」
ゆう子は驚いた。友哉はまさに鬼の形相をしていたのだ。
◆
ゆう子の判断でホテルの部屋に瞬間移動された友哉は、立ち上がれないほどの疲労感で、転送されたその場で倒れこんだ。
場所が洗面台の前だったから、「なんだ、ここは。ベッドの上に転送しろよ」と文句を言いながら、床に蹲っていた。
「ごめんなさい。ちょっとしたミス。ねえ、どこを撃たれたの?」
ゆう子は泣いていた。化粧がはがれるくらいだった。
友哉が消失する直前に撃たれたテロリストの男は絶命し、町の人たちが声にならない声を上げている。
「ここにテロリストと闘っていた日本人がいたのに、ものすごいスピードで走って逃げた」
駆け付けた警察官に捲し立てているポーランド人の男もいた。
数分間の異常な出来事に、ワルシャワの町は混乱を極めた。
早撃ちの勝負に勝った男は肩から血を流しながらも笑ったが、急にその醜悪な表情を一変させた。胸の真ん中を撃たれた友哉が立ち上がったのだ。
「くそう! 俺の責任だ。奥原、身体中を撃たれた。昨夜はありがとう。俺はこいつを殺して、アウシュビッツに行ってくる!」
「え? 転送!」
ゆう子がそう叫んだ瞬間、友哉はテロリストの男の頭を撃ち抜いていた。
テロリストの銃弾は友哉の胸に命中し、友哉のPPKからの赤い光線は男の肩をかすめただけだった。
心が乱れた。敵の銃を撃ち落としてくれなかった。
友哉は愕然とした。広島と長崎を小ばかにされたからか、錯乱した子供のケンカのような撃ち方をしていた。PPKから発射された赤い光線は、どこか迷ったような飛び方をしていた。テロリストの肩をかすめた後、空中でカーブを描き、またテロリストに向かったが、途中で弱々しく消失した。
昔ながらの決闘を楽しみたいのだろうか。
「街の人たちをアウシュビッツに行く人たちをよくも」
「それを狙ったのではない。世界遺産の美しい町はある意味、我々の人質だ。ああ、アウシュビッツも世界遺産だったな。日本人には関係なかろう。ヒロシマ? ナガサキ? アウシュビッツ?」
男はそう笑いながら、銃の引き金を引いた。同時に、友哉もPPKの引き金を引く。
だが銃弾の一部は体に命中しているように思っていた。それを気にして体の動きを止めた時に、テロリストの男が友哉の眼前に立った。
「なんだ。おまえは? 日本人なのに」
目を剥いている。観光客の一人が突然拳銃で応戦してきたのだから、驚いて当たり前だ。
友哉が腰砕けになっているのを見た彼は、うっすらと笑みを浮かべた。散弾銃を捨てて、45口径の銃口を友哉の胸に向けている。
「だめだ。まだ一人、いるんだ」
友哉はレストランの外に飛び出した。約30M先にもう一人のテロリストの男がいた。男は、狂ったように散弾銃を乱射をしていて、友哉に向けても撃っていた。友哉は、機敏な動きで弾丸を交わしていた。
どうしてこんなに軽く動けるんだ。
まるでチーターのように走れた。
自分の体ではないみたいだった。
周りを見てもロクな男はいない。だけどそれは
女も悪いと思う (岡本敏子)
「すごい。赤いのが扉を突き抜けた。扉はほとんど壊れてない」
ゆう子も声を上擦らせている。
テロリストの男の胸には血が滲んでいる程度。5cmほどの小さな穴が空いた。光線の速度が速くて出血しなかったようだが、やがて血が出てきて男は呻き声をあげながら絶命した。
客は不思議な銃を撃った友哉を見て、悲鳴をあげている。パニックが分かったのか、ゆう子が「ホテルに戻ろう」と叫んだ。
その光線は扉を突き抜けて、さらにテロリストの男の胸を突き抜けて、そこで消失した。
なんて強力な光線だ。これが地核の物質か。熱は手に伝わらない。冷却装置か。
見た目はモデルガンだが、丸ごとすり替えたように見えるほど、素材も違っていた。
自分の部屋の壁を撃った時は弱々しいただの光だった。敵によって強弱が変化するのか、または自分の怒りによって変わるのか
「友哉さん、できないなら転送するよ」
ゆう子の声が頭の中に響いた。
友哉の右手にはワルサーPPKが握られていた。友哉のコレクションのモデルガンをトキが改造したものだ。そして銃弾は発砲されない。
パニック状態で、扉に向かって引き金を引いてみる。安全装置を外す必要もなく、何も考えないで撃ったが、銃口から発射された物質は弾丸ではなく、赤色の光線だった。一直線に進む火の玉にも見えた。
『しまった。レストランに妙な奴がいないと分かった時に外に出たらよかった。何もかも遅れた』
イメージトレーニングはしていた。日本で、チンピラのケンカを止めに入って練習もした。だが、テロは町のケンカとは規模が違った。
南国の肌色の男が一人、レストランの玄関に近寄ってきて、扉に散弾銃の銃口を向けた。
車から出た男二人は、散弾銃を乱射しながら、レストランに駆け寄ってきた。腰には45口径も挿してある。宗教の言葉を叫んでいた。友哉にはそれの意味も分かった。「我々の神は偉大だ。世界を創造したのは我々の神だ」と言っていた。
銃は発砲を続け、歩道にいた人たちが壊れたロボットのように倒れていく。
友哉は初めての『仕事』で、判断力を完全に失っていた。
「歩いている人は警察官ですか。GPSからなんとなく見えます。あ、店の外の防犯カメラに侵入できた。その歩いている人はダークレベル1です。車の中の人間は二人」
ゆう子が絶句したのが分かった。
「レベル5! テロリストだ!」
間に合わなかった。警察官は車の中からの凶弾に倒れた。見た目に分かるほどの即死だった。
友哉は大きなため息を吐いたが、それが聞こえたようで、
「ため息がうるさい」
とゆう子が言った。
窓から通りを見ると、古いBMWが一台停まっていた。駐車違反なのか警察官が近寄ってくる。
「近くに警察官が一人、BMWに近寄っていくがどうだ?」
の冬物のレザーを買ってくれないかな。ルイヴィトンのロゴが金色のやつ。高いけど仕方ない。メッシュと合わせるの」
ずっと喋り続けている。
友哉は半ば呆然としていた。友哉にしてみれば、初めて出会うタイプの女だった。
「佇んでないよ。座っている」
「え? なんか日本語、間違えた やだな、作家さんは細かくて」
姿で通信中です。パンツは水色。友哉さんは薄い色のパンツが好きなのを知ってるんだ。ね、抱きたなくならない? それに友哉さんも素敵。ワルシャワのレストランで佇む日本の小説家。ポーランド人は芸術家を尊重するから、席を譲ってくれますよ。その赤いアウターに黒ジーンズ。ファッションが苦手な男の人の究極の組み合わせ。でも髪の毛がだめ。今度、わたしがメッシュを入れてあげるから、それに合わせて、秋になったらルイヴィトン
「後で説明します」
ゆう子はそう言って、話を止めた。
「リングが反応したよ」
友哉のリングが赤色に点滅した。けっこう眩しい光だが、周囲の人には見えないようだ。
「赤く光ったら、一時間以内に、友哉さんか友哉さんの近くにいる人に危険が訪れる警告です。ちょっと離れてるけど、わたしかも知れません。助けにきてね。かわいいスリップ
「日本の終戦日も昔にあった大事件も、歴史上、日時が分かっている。テロがあった日時くらい、未来から調べられないのかな」
「エジプト文明に何があったのか、その日時が分かりますか」
「」
「歴史上は分かりませんよね」
「歴史上の話と言うよりも、タイムマシンのようなもので分かりそうなんだが」
よかった。このリング、便利で良いな。
彼女は息苦しくなる病気なのに、よく喋る。だが、お喋りなのがかわいいから、辛くなったらまた治してあげようと友哉は思い、食事をしている日本人の観光客を見て、少しだけ微笑んだ。
彼らに何事もなければいいんだが…
彼らの手の動き、トイレに行く時の歩き方、時間の経過を見ていて、なぜ、正確な日時が不明なのだろうか。未来から見て、それくらい分かるはずなのに、と、ふと思った。
大衆は寛容だ。天才以外はすべて認める。
(オスカーワイルド)
ミルコ・デムーロが株よりも確実らしい (笑)
笑顔が最高にかわいらしい女性から、
「ありがとう」と言われた
女の子の笑顔と少年の男らしさの中に見出せる夢を
昨日も見つけた
今日も良い本と出会った。あなたの悩みは良書の中に、
その答えがある
愛されなくてもいいから、わたしを信じてほしい
…会いたい、そう言ってくれた君に
天気がいい。新しい真っ白なスニーカーを履ける
利他的な人が苦しむ世の中を改善したい
小さい命が頑張っている。おまえも頑張れ
少し昔、拷問、処刑、殺人が日常だった。今はユートピアと思おう
宗教よりも自分を信じろ
今、一番好きな人に会いに行く。そういう休日にしよう。
究極の愛は、二人だけの秘密を持つこと
夢には続きがある。
途中、途切れてもまた繋がる
お金は美しいひと、場所に近づいてくる
本当に優しい人は、身近な人が病気になった時に
本気になる。普段冷たくてもね。
昨日、アシスタントの女性に、ある話で、
男の友情ってすごいねと言われた
結婚願望の強かった友達女性の結婚が決まった。
幸せになってほしい
運命はある。愛する人は戻ってくる
まだ見ぬ人も待っている。
車庫で猫が倒れていたから泣きそうになった。
よく見ると爆睡していただけだった。さすが猫。
やることが多すぎるから、
あえて寝ている
好きだった女性が、さらに美しくなったのを
見ることができた
GUCCIも毛皮をやめてくれるそうだ
あと車の本革をやめてほしい。俺のもレザーだけどさ。
選択肢がない時もある
里中李生の恋愛メルマガを発行しているフーミーです。里中は二年間、連載しています。
ゴルフをキャンセルした男から
謝罪の手紙と遅い誕生日プレゼントがきた
今日はひどい目にばかり遭った。
そのため決心することができた。それでいい。
トラブルを楽しめる余裕が出来たら
男は、女性を守れる
田舎の川が以前より
綺麗になっていた
美女と仕事は一緒にやってくる
86歳の父が食事を摂らなくなったのに
息子の僕の言うことを聞いて食べてくれた
テスト
友人からの電話は心地よい
メールよりいっぱい話せる