◆

 成田空港のフロアの一角に、メルセデスベンツが展示してあった。友哉が最新型の銀色のベンツを眺めていると、
「先生。佐々木先生」
 女に声をかけられる。テレビにも出ていないしネットにもあまり顔は出していないから、読者ではないと分かっていた。成田空港に女がやってくることはトキから聞いていた。秘書になる女性との交渉が成立した後に、友哉のスマートフォンの中にそんなメッセージが入ったのだった。
 なので、現われたのはトキが交渉した秘書になる女性で確定だった。その女が現れたら、テロとの戦いは現実味を帯びてくるが、
line本当に現われたのか。困ったな。
 友哉はほぞを噛んだ。断るタイミングを逸しているうちに、指輪を買いに行かされ、拳銃を持たされ、今度はテロと一緒に戦う女が現れた。

「当然です。しかし、友哉様がディズニーシーという行楽地に一緒に行った女性。きっと、男からもらった物品を売らない女性ですね。彼女よりも美しい方は滅多にいませんが、それでもよろしいですか」
「秘書と元カノを比べるわけないだろう。それに、美女が多い時代だ。あいつよりも美人もたくさんいる」
「確かに、美しい女性が多いですね。我々の時代とは違います」
 トキは遠くを見ながらそんな言葉を作ったが、辺りが暗くなってきて、
「そろそろ、彼女と交渉してきていいでしょうか」
と言い、手にしたスマートフォンのような機械を見ながら、マンションのベランダに向かった。そして友哉の返事を待たずに、消えた。水が蒸発するように夜の闇に姿を消失したのだった。

「俺の寿司に煙草の煙を吹きかける男や、セックスで男を売る女まで助ける正義感はない。テロに巻き込まれる人間を一人一人チェックしてからやらせてもらう」
「そうですか。ただ、秘書になる彼女は友哉様とは逆に正義感が強く、しかも暇になるので、テロリストや凶悪犯との戦いに熱中するかもしれません。友哉様もお暇ですし」
「君が本当に未来人だとしたら分からないかも知れないが、この時代の秘書は、美人秘書と必ず言われないといけないんだ。それは押さえてくれよ」

「とにかく破滅願望をしばらく封印してください。友哉様を見捨てた女性は友哉様のそれが好きだったようですが、秘書になる女性は心配性なので」
「心配性? だったら、彼女と一緒にテロリストと戦ったらいかんだろ」
 思わず声を上げてしまった。
「今の友哉様はテロリストよりも強くなっていますので、秘書になる女性が心配するのは最初のうちだけでしょう」

…私が帰った後に、私の使いの者が時折やってきます。この短時間で説明ができなかったことを別の者が説明にやってきますが、友哉様のその態度では、その者が怖がって話ができません。私からの使いの者たちにはもう少し温厚な態度でお願いします」
と言った。
「なんで未来人が昔の人間を怖がるんだ」
「友哉様も織田信長と対峙したら怖いと思いますよ」
「ああ、確かに…。織田信長は怖いな」
 妙に説得力があり、頷いてしまう。

「それは何かの間違いだ。おまえのような正常な目をした優しい顔の男が、世界を支配できるはずがない。スターリンやヒトラーと比べたら、まるでモラリストの顔だ。妙な嘘を言うな。足が治ったことでその薬を使った科学者だとは信じる。大手製薬会社を出し抜いたどこかの研究者が、アメリカからやってきたわけだ。俺を騙せると思うなよ。結局、CIAから追われている君が、僕を助けてほしいっていうオチじゃないのか」
「良かった。まるで的外れですが、その調子でずっとお願いします。ただし…
 トキは真顔になって、

「驚かさないでください。もう少しで泣くところでした」
「なんで、君が泣くんだ」
「私がきてよかった。別の者だと絶対に説得できなかった」
 なんと胸を撫で下ろしている。
「直々にきてくれたんだね。どんだけ偉い男なんだ、君は」
「世界をほぼ統治しています」

「五十億円の予定ですが、もっと…
「五十億?バカにすんな。その小銭でテロリストと戦う? 欧米の偽善団体に献金したら、三日で無くなる。それを君がどこから捻出するかには少し興味があるけどね」
「友哉様の愛する女がテロリストに襲われるとしてもやらないですか」
「日本でテロでも発生するのか」
「その可能性は0ではないでしょう?」
「愛する女はいない」
 トキが、友哉を凝視した。まるで、恋人や親友に裏切られたような顔で呆然としている。しかし、彼のその顔を見た友哉が、
「はいはい。嘘ですよ。やりますって」
と笑って言った。

 真顔で言うとトキは、
「女を愛すと弱くなるですか。やっぱり重傷です」
と言って、大きく息を吐き出した。
「やりたくないですか。テロリストや凶悪犯との、この時代で言うケンカとやらは」
「やらない。そのあーるなんとかを見て、やる気がなくなった」
「ブレーンに言われてきました。その場合、報酬を増やせと。秘書をあと三人でどうですか」
「いらない。どうせブス」

「思い出したくもないですか。だからもう死んでもいいと思っておられる」
「俺は自殺はしない。おまえの言葉は語弊だらけだ。人には寿命がある。俺の寿命は四十五歳だと悟っただけで、死にたいとは思ってない。そして足が治った今はもう気にしてない。たった今、沖縄辺りで美女と遊ぶ夢ができたよ。しかも怖いこともある」
「それはなんですか」
「女を愛することだ。女を愛すと死にたくないと思う。つまり弱くなる。次に俺が交通事故に遭った時、女がいなければ笑って死ねる。さっきのおまえの例題は俺には役にたたなかった。恋人はもう作らないから一緒にコーヒーも飲まない。旅行も行かない」

「友哉様に怖いことがあるのですか」
「さっきから人を知っているような言い方をするなって」
「私を見て驚いたのは最初の三十秒ほど。今、脈拍が七五。生い立ちから調査して知っております。暗くなっても墓地を通る近道で友達の家に行っていた。ご自分が怖いのかも知れませんが、その銃を持てば自分に理性があると分かります。それに夢を無くした今は死んでもいいと思っておられる」
「夢?」
「一緒に夢を叶えようとした女性がいなくなりました」
「またそれか。名前を言うなよ」

「便利すぎるモノは怖いから、これは返す。俺が発狂したらどうするんだ」
 トキがずいぶん年下に見えて、しかも彼は敬語。友哉はケガを治療してもらった恩を忘れ、上から見るような喋り方をしていた。
「今の台詞が理性の塊です」
「そもそもこのアールなんとかを敵が持っていたらどうするんだ。正義とは、自分のことだ。凶悪犯が持っても、その凶悪犯の正義は殺人だぞ。イデオロギーの話だ。この銃と同じ武器が世界中に散らばったらどうなるんだ」
 トキは少し辛そうな顔をして、
「戦争になりますね。あっという間に」
と声を落として言った。
「怖い。やっぱり返す」

「たまたま毒が入っていただけで、間違えてコーヒーに入れた人に悪意がなかった」
「その通りです。ですが、もしかしたら毒が入っているかも知れない、と友哉様か彼女が不安に思っていたら、反応します。RDとリングがシンクロしていて、リングが調査するんです。もし、毒に敵が触っていたら、そのDNAが毒に付着しているから、もっと反応がよくなります。便利な武器でしょう? ただコントロールは難しいですよ。そのリングが相手の悪意、殺意を検知もしますが、無心で人を殺す人間もいますし、戦争の善悪はつきにくいものです」

「日本に向かって発射されるミサイルを撃てる? 地核のエネルギーなら破壊できる」
「できます」
「そんなのを携帯していたら世界征服ができるぞ」
「できます。ただ、頑張らないと無理です。遠くにいる敵の位置を確認し、敵の近くに善良な市民がいかないか確認し、それを破壊することが正当なのか、友哉様が自分で納得しないと撃てません。それに万能ではありません。例えば友哉様の恋人が飲もうとするコーヒーに毒が入っていたとします。毒に悪意がなければRDは反応しません」

「このリングと俺の脳と、この拳銃が繋がっているのか」
「そうです。相手を撃つ際にかかる友哉様の筋力と心理状態を瞬時に計算し、威力の調整を自動で行います。慣れれば友哉様の意思でも調整できます」
「君が俺に殺意がなくて、君が善人だったら、毒物を持っていてもそれを撃てないとか」
「そうです。毒物で人を殺すとは限りません。調子が出てきましたね。時間がないからその調子でお願いしします」
「テロリストが持っている銃だったら、ピンポイントで撃てる?」
「御名答です」
「ちょっと待て」
 友哉が考える素振りを見せ、トキと名乗る男も口を閉ざした。

「RDの説明が必要だとは…よほどお疲れのようですね」
「RDっていうのか。この銃の中身は」
「今の赤い光線を見れば分かりますよね。地球の地核エネルギーと同じ熱が発射されます」
「分からない。熱も微量にしか感じなかった。元気があっても分からない」
「超高温のエネルギーをレーザーで発射します。それくらいの技術ならこの時代にもあります。ただし、相手に悪意、殺意がなければ発射しません。あの壁に友哉様を殺そうとする意識はないということですが、地震で倒れてきて、友哉様を押し潰そうとしたら撃てます。それは友哉様の憎しみや恐怖が壁を「敵」と見なすからです。また殺すだけではなく、友哉様のストレスになる人間をこらしめるために、微量の熱を発射することもできます。軽い火傷を負わせる程度ですよ。しかし、友哉様がストレスになっていない人間や物は傷つけられません」

「念じてください。銃が必要だと」
 友哉がなんとなくそう考えると、自分の手の中にPPKが現われて、手のひらに吸い付くように収まった。まるで目に見えない風船が膨らんだようだった。
「我々の世界ではモノを減らすために、そうこの時代で言うゴミを減らすために、モノを圧縮して小さくする技術を開発してあります」
「念じると出てくるって…
「友哉様が超能力者になったのではなく、リングの中にある技術が転送させてきたのです。私のスーツの中から友哉様の手の中に」
「これでテロリストや悪党と戦う? あんな弱々しい光線で」
「友哉様、らしくないですね」
 トキが苦笑した。
「らしくない?」

 友哉が銀座で買った、トキから頼まれた品は指輪だった。
 女性用と男性用。男性用はすでに友哉が左手の人差し指につけているが、その二つの指輪を買って帰り、トキに渡すと、彼はリビングからベランダに出て、またしばらくすると戻ってきて、友哉に男性用の指輪だけを渡した。
「これをずっと外さないようにお願いします。先程、私が渡したモデルガンのワルサーPPKは今、どこにありますか」
「さあ。君が隠した?」

 皮肉を連発する友哉をトキが少し睨んだが、友哉はそれを気にせずに、淡々とした顔つきで手に持っていた銃を部屋の壁に向け、引き金を引いた。銃口から赤い光線が発射され、その光線の火の弾は壁の手前で消失した。
「中身は未来の武器になっています。友哉様の指輪とリンクしていて、相手の悪意、敵意を見抜ける武器です。無意味に壊してはいけないものは撃てません。どうですか、やる気になりましたか」

「アイロニーってやつだ。俺の元カノはそんなことは絶対にしなかった。それだけで付き合えた。女はたったひとつの美しさで愛せるんだ」
「それだけ女性は長所が少ない?」
「そうだ。先生が教えてあげようか。女のすべての短所を」
「けっこうです。私には好きな女性がまだいるので」
「それは運が悪いな」

 友哉は、スパイ映画にあるようなそのビジネスの話を大雑把に聞いた最初は難色を示したが、さらに現金の報酬もあることを聞き、トキを見ながら生返事で了解していた。現実味がなく、冗談かも知れないと思ったが、動かなかった足は急に元通り、動くようになり、部屋にあったモデルガンを彼に渡すと、トキに頼まれた買い物をしている間にそのモデルガンが部屋に置かれていて、重さが変わっていた。少し軽くなっていて、右手に吸い付くように収まり、とても手に馴染んだ。
「久しぶりに銀座を歩いた。感動したよ。金持ちからもらった指輪やブランド鞄を質に売ってるホステスを見てね」
「それは感動なのですか」

「はい。視力なども回復させましたが、それも元の近視に戻ります」
「そういえば、急によく見える。副作用があっていいよ。まさに夢のようだ。まさか、胃痛や関節痛もなくなるとか」
「無くなりますが、副作用があります。これからある女性と私が会ってきます。その女性の指示に従って、テロリストや凶悪犯と戦ってください。その女性が副作用に効く特効薬も持っているので」

「今、友哉様に与えた薬のような栄養素で足は治りましたが、そのうちに副作用が出ます。友哉様の精神力ならその副作用に苦しんで自殺することはないと思いますが、怖いのなら、もうひとつ、今のクスリを無くしてしまう光も持ってきましたがどうしますか」
 トキと名乗る男は、「光」と言いながら、自分の左手のリングを友哉に見せた。プラチナカラーのリングは無機質だが、やはりダイヤモンドのように硬質に見え、艶があった。
「足がまた動かなくなる?」
 友哉は動くようになった足を愛しそうに擦りながら、彼を見上げた。

「もてない男女には残酷な国だよ。ディズニーシーで女と手を繋いで歩いているところまで、君が知ってるのが奇妙すぎるがね」
「条件、その他、提示していいですか」
「いいよ。百点満点なので。その前にdots
「なんでしょう?」
「人間観察が出来ない奴とバカにしたが、君が何かで悩んでいることを、いきなり俺に晒したのは気づいている。カウンセラーを紹介しようか」
「けっこうです。私の悩みは、あなたですから」
 友哉は言葉を失った。それを見たトキは、少し勝ち誇ったような顔をした後、話を前に進めた。

「そこまで言い当てたら、君の条件を飲むよ」
「条件?」
「足を無償で治すはずはない」
「調子が出てきましたね。それほど頭は重傷ではなかったようです。きちんと付き合える女性が必要なのは、一人で旅行に行けないからです。家族旅行をしたことがなくて、お父上が亡くった後、一人で伊勢神宮に行って泣いてました。それ以来、一人で旅行に行けません。その後、別れた奥さんとの新婚旅行も感動しましたが、前の彼女とのディズニーシーという場所で、こんなに楽しいことがあるのか、と思わず口にして彼女と手を繋いでいました。この時代は、恋人がいないと遊べない場所が多いですね」

「友哉様は有名人なので、この時代の監視システムでも過去を調べることは可能だと思いますよ。ましてや私は未来人ですので、私は友哉様の女性の好みまで知っています」
「それをぴったりと当てることができたら、さっきからの暴言はなかったことにするよ」
「気が強く、だけどベッドの中では大人しくなるような女性。白い肌、お喋り、マゾヒスト。マゾヒストが愛しいのもベッドの中で。普段は逆にサディストのような女性が良くて、それは女性のサディズムに友哉様は恐怖を感じないからです。そのため、選ぶのは童顔な美女。さすがにゴリラのような女性が怒ったら怖いからでしょう。長く付き合える女性を探していて、女性の職業、学歴にはこだわらない。長く付き合うと言えば聞こえはいいけれど、セックスだけの関係でもよくて、妻でもよくて、恋人でも愛人でもよくて、それは友哉様がある弱点を補いたいからです」

「そうそう。恋人や娘を守るために始めたような気がしてきたが、そんなサバイバルな男はいないはず。記憶が混乱している。事故のせいかな」
「友哉様がボクシングを始めたのは、そのほっそりとした体形を維持するためで間違いはなくて、途中で目的に変化が出たのでしょう。よくあることです」
「ほう、よくあることか。きっかけがあれば、人は変わるからな。それで、なんで俺がボクシングをしていたのを知ってるんだ?」
 再び、目尻を釣り上げてトキを見た。

「いいことを聞いてくれた」
 友哉が声を少し上げたのを見て、トキが思慮深い目付きで彼を見た。
「太らないために筋肉を付けようとしていたんだ。それがふと、なんのためにボクシングの練習をしているのか分からなくなって、モヤモヤするんだ。しかもdots
 友哉が言葉を一度、言葉を止め、唾液を飲み込んだ。
「ボクシングを始めたら、目付きが悪くなったのかなあ。よくケンカに巻き込まれるんだ。だから、やめようかどうか迷っていた」
「ダイエットと筋肉のためにボクシングを始めたのに、ケンカのために練習しているようで気持ち悪い状態ですね」

「分かった。俺を怒らせる作戦だな。前、付き合っていた女の得意技だった。だけど、君は女じゃない。作戦の意図を訊こう」
「女がいなくなって腰抜けになった友哉様をどうするか。まずはそれが先決だと今、考えています」
「蝉の抜け殻、腑抜け、腰抜けdots。もう一度、悪態を吐いたら殴る。きっと、君の魔法か何かで俺がやられるんだろうけどな」
「ボクシングをやっていたようなので、私が負けます。では雑談をしましょう。私の世界では事情があって格闘ができません。それにも興味がないと思いますが、私から聞きます。ボクシングはなんのためにやっていましたか」

「光を? それも極秘に開発した技術? 世界の大成功者はすでに使っているとか」
「女がいなくなって蝉の抜け殻のようになった事は仕方ないとして、お仕事である人間観察や考える力を捨ててもらっては困ります」
「今、なんて言った?」
 友哉が目つきを変えると、
「私は何も言ってませんよ。友哉様が腑抜けになったとは言いましたが」
とトキがおどけてみせたが、彼も目を怒らせていた。

 友哉が淡泊に言うと、
「思ったよりも重傷ですか。他人や世の中に興味を持つお仕事なのに、私のこの銀色のスーツ、私の素性に無関心ですか」
と言った。
「NASAから来た無名の科学者が、俺をモルモットにしたとか」
「その男が友哉様と呼ぶのですか。まあ、無理に言わなくてけっこうです。大麻、抗鬱剤らと同じ効果がある光を差し上げましょうか」
 不機嫌に言いながら、人差し指にはめているリングを見せた。プラチナに見えるが、もっと硬質で輝いていた。

「上半身は起こすけど、いいか」
「いいですよ」
 友哉が上半身をベッドの上で起こし、枕を背中に入れて、動くようになった足を触ったり、持ちあげたりしていると、
「何か訊くことはないのですか」
とトキが怪訝な表情を見せた。
「夢ではない確認はした。君が強盗じゃないことも分かった。玄関のドアは介護士が閉め忘れたのだろう。管理人が下にいるようなもっと良いマンションにすればよかったが、職を半ば失っているのでね」

「これであなたの足は治りました」
と笑った。その笑顔はとても慈愛に満ちていて、優しかった。謙虚とも言える微笑みだった。ただ、爽やかさもなく、どこか瞳は悲しげで、友哉から目を逸らすと、途端に目力がなくなる。何かに苦悩しているのかと、友哉は印象を持った。そう、「隙がない」と思ったゆう子とは違う印象だった。
「友哉様、落ち着いてください。私から頼みがあります。しばし、落ち着いてください」
 トキはそう敬語で念を押すように言った。友哉は足が動かせるようになったことに驚いたが、トキが頭を下げる勢いで「落ち着いてください」と繰り返すので、そのままベッドで寝ていた。

『あなたを超人のような体にした以上、その体を持てあまされても困るから、私が頼む仕事をしてください』

 トキと名乗る自称未来人がそう言った。介護士が帰った部屋で寝ていたら、突然、彼は現われた。驚いたが、体が動かせない友哉は、「強盗か。殺すなら殺せ」と言った。ところがトキと名乗った彼は、ペンの形をした容器をスーツにあるポケットのような穴から取り出した。それはまるでダイヤモンドで作られたかのような硬質な透明の容器で、その先端を友哉の足に突き刺すように置いた。ダイヤモンドと見間違うその容器が緑色に輝き、そして、

line体が軽い。
 一か月ほど前まで、車椅子だった。リハビリを続ければ少しずつ歩けるようになると医師から言われていたが、杖は一生手放せないかも知れないとも言われた。スポーツもセックスももしかすると車の運転もdots。何もかもできなくなり絶望していた。それが、今は体のどこも痛くないばかりか、奇妙に軽い。空を飛びそうな感覚だった。
 しかし、友哉は安直に喜んではいなかった。
 神妙な顔で、息を殺して座っていた。急に不安になり、新聞の野球の記事は頭の中に入らず、新聞を椅子の上に捨てるように置いた。

「左手薬指の指輪は、彼からもらったのか」「それは誰なのか。一般人か」
 記者会見の席。マスコミから矢継ぎ早に質問が浴びせられた。
「彼が買ったものですが、婚約指輪じゃありません。Kissもしないし、手を繋いでデートもしていません。そういうことはきっとしてくれない人です。一般人か? 微妙ですね」
 記者会見の場は一瞬、静まり返ってしまった。
 佐々木友哉は、その記者会見の模様をテレビでは見ておらず、指輪のことも知らなかった。
line見出しは引退になってるけど、パニック障害の治療のために三年間だけ休養するって書いてある。売るための記事だなあdots
 そう頭の中で呟き、まったく興味がなさそうな顔でスポーツ新聞の次の項を捲った。

『衝撃の片想い』
 どこかのコメンテイターがそう言ったのか、瞬く間にその言葉が全国に広まった。
「好きな男性がいて、そのひとがわたしに振り向かないから、花嫁修業も兼ねて、三年くらいお休みさせていただきます」
 奥原ゆう子は、マイクに向かい、明るくそう言い放った。
『真剣みに欠けていて、どこかふざけているように見えた。それとも片想いの男性のことで頭がいっぱいなのか』
 そんな批判的な記事が載っていた。

 作家の佐々木友哉は成田空港の出発ロビーの椅子に座って、スポーツ新聞を読んでいた。
 女優、奥原ゆう子の電撃引退記事が一面を飾っている。
 まだ若い国民的人気女優が、パニック障害の体調不良と、「片想いの男の人がいるから」、という理由での引退である。パニック障害も辛そうだったが、奥原ゆう子は「片想いの男性」のことを喜色満面に話していたため、マスコミは狂ったように騒ぎ、今、佐々木友哉の目の前を歩くカップルも、その話題を口にしていた。

第一部 闘い編

第一話 作家vs女優

◆AZ重要事項 RDの詳細◆
【佐々木友哉が所持する拳銃、名称PPKの中に埋め込んだRDは人間の脳とリンクし、ノルアドレナリンのコントロールにより最大で地核と同じ高熱を発射することができ、天才のサイコパスや、子供や孫がいない好戦的な政治家が持つと危険である。恋人を失い、体も悪くした佐々木友哉には、様々な迷いがあり、現時点で、RDのコントロールはできない。そのため、ゆう子さん、あなたが必要である】

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「わからないよ」
「神経も痛めた複雑骨折の治療のため、他の筋肉、骨も強化させてしまっている。そんな我々の医療薬の副作用が出るが、それがとても彼には苦しい。しかし、君に優しくしてもらえば緩和される。君は彼に相応しい女性だ」
 彼の名前は、佐々木友哉。四十五歳。小説家だった。
 トキは言った。
「その男は私のご先祖様だ。私と仲間たちの希望だ」
と。

「治したって?」
「未来の医療技術で治した。今は超人のような男になっているが、まだ大けがをした時の心の傷は癒えていない。本人は否定しているが、私の見立てでは集中力が欠如している。さっきから君は彼のことを、優しい男のひとだ、と呟いているが、今はそうではないと思う」
「そりゃあ、そうでしょ。わたしだったら自殺してる」
 ゆう子は丁寧な言葉も忘れ、絞り出すように言った。その勢いでなぜだか、『この男の人の役にたちたい』と強く思い、膝の上に置いていた枕の端をぎゅっと掴んだ。
「彼の記憶の一部を消して、心の傷を治療することもできるが、それをしてしまうと性格が変わってしまい、本人ではなくなってしまう。彼は優秀だから、違う人間にしてしまうわけにはいかない。わかるな」

「このひとは車椅子じゃないですか」
 姉妹と遊んでいたその後年、交通事故に遭い、車椅子の生活になったようだった。ゆう子はそう絞り出すように言うと、
「今は違う。わたしが治した」
 トキは答えた。
 ゆう子の頭の中に入ってきた優しいその彼は、交通事故に遭い、車椅子の生活に絶望していた。青白い顔で、だが決して泣くことはなく、時々、発狂したかのように笑い、急に空を見てはまた笑い、いつも一人の部屋でいた。なぜだろうか、事故の現場で泣いていた娘の姿もない。泣いていたのは背丈から妹のようだった。二人で公園で遊んでいて、次の映像では救急車が到着していた。ドキュメント映画のような映像は、退院した彼が部屋の整理を一人でしているシーンで終わり、シュレッダーで写真や何かの書類を処分していた。それが一年ほど前だと言う。

 自宅を見ると、妻とは寝室は別にしていて会話はほとんどなく、友人はみな仕事の関係者のようで、愛人のような女が一年から三年に一度のペースで変わっていた。それなりにもてるようだが、彼が優先しているのは、二人の娘のようで、ディズニーランドにもよく出かけている。結婚した歳が早かったのか、父親には見えない彼と高校生になった姉と二人だけでディズニーシーに行っている様子も見え、まるで歳の差カップルのようだった。顔は紗がかかったようになっていてはっきりと見えないが、姉妹はとても美少女のようで、姉が芸能プロダクションの者にスカウトされているシーンもあった。父親である彼の顔が緩みっぱなしなのは当たり前と言えた。
 比較的、遊ぶのは室内の方が多く、特に海はなかった。高級ホテルや幕張のイベント会場、スカイツリーなど、女とは行かずに娘と行っていた。そこに妻がいない。

 彼の傍には必ず少女が二人いる。娘の姉妹のようだった。二人とも、彼にべったりとくっついていて、小学生の低学年ほどの娘が、「お父さんと結婚する」というと、負けずに十四か十五歳くらいの姉も「結婚するのはわたし」と、はにかんで言っていて、妹は中学生の姉には勝てないと思ったのか、いつもやきもちをやいている。その後、三人で温泉などに行くようになり、彼が仕事を旅館にまで持ち込んでいる時は、姉がお茶を淹れたり熱心に肩をもんだりしていた。彼が唯一、無邪気に笑っているシーンは、その姉妹と一緒にいる時だった。温泉宿にはもう一人、大人の男性がたまにいるが、別の日にホテルのロビーでもいる。打ち合わせをしているようで、仕事の友人のようだった。そのホテルでも姉妹のどちらかが彼らの周りをウロウロしている。

 そして奇妙な哲学も女たちに語っていた。それは過去と今の人間は違う人間という持論だった。時間が存在するかしないかは相手によって変わる。dotsアインシュタインの話なのかプラトンのほうだろうか。彼のオリジナルなのだろうか。ゆう子はそれに興味を持った。だが、トキが、
「女性の過去は気にしない、と言いたいのでしょう。簡単に言えばいいものを変わった男です」
と笑った。

 男たちにも同じように優しく接していて、陰徳も積んでいて、貧困国の子供たちに定期的に寄付もしている。「まるで優しさの大安売りだ」と、ゆう子は呆然としてその映像見ていた。
 ゆう子は、彼と自分が幼馴染で、ずっとその彼と交際していたかのような錯覚すら覚えた。
 泣いていた。ゆう子は涙が出てとまらなかった。
lineこの男性は、なぜこんなに人に裏切られるのだろうか。つまり、優しい人間は貶められるという証拠か。
 悲しくて、あまりにもその生き方が真剣すぎて、なのに不運ばかりが続く男の人生を映画で見せられたような気分だった。

 彼はこめかみを指で押した後、
dots仕方ない。やはりこれで」
と言い、また部屋の中を緑色に光らせた。
 突然、ゆう子の頭の中に少年の姿が浮かんだ。
 母親と喧嘩をしていた様子や、友人に裏切られて落ち込んでいる様子。その母親はやがて男と蒸発。大人になったその少年が、見知らぬ女の子とデートをしている光景。セックスをしている生々しい姿も断片的にゆう子の頭の中に浮かんでは消えた。変態セックスを希望する女とする汚いセックスもたまにあった。しかしそんなセックスに疲れた女を、一晩中看護するように見守っているシーンがいっぱいあり、なのにその女は翌朝消え、二度と帰ってこなくなっていた。

「私の世界では、難なく治療ができる心の病だが、この時代にやってきた私には、もう力がないから、一時的な処置だ。私はこの時代に一回だけしかいられない。間もなく、私の時代に帰るので、今から要点だけをまとめて話すがいいか」
lineと言われてもdots
 ゆう子が無言でいると、その青年はゆう子の返事を待たずに口を開いた。
「君は今から三年後のある日に、その男に強烈な恋心を抱き、彼も君に惹かれる。それを少し早め、今日から好きになってもらいたい。きっと女優業を休む決心がつくはずだ」
 ゆう子は呆然として聞いていた。何か聞き返したくても、話についていけない。そして、優しい好青年に見えた彼は、よく見ると凛とした佇まいは崩しておらず、とても怜悧に見える。
 別の場所に視線を投げても、そう隙がないように見えた。愚痴は零しているが背中が丸まっているわけではなく、声にも震えがない。どこか気高くも見え、ゆう子は体を硬くした。
「もし、君が嫌だと言ったら彼のケアは次の恋人に頼むことになるが、それは私の本意ではない」
「次の恋人?」
「三年の間にその彼に恋人ができる。恋人になりそうな女も。その女たちに頼むのではあまり意味はない。いや、意味はなくはないがdots

 ゆう子は飛び起きるほど驚いた。そして現実に起きることができ、夢から覚めた。なのに、トキと名乗る男は目の前に立っていた。部屋の隅、寝室のドアの前に。
 左手を見ると、指輪もはまっている。
 背中には冷たい汗が流れ、動悸は鎮まらない。もはや、下着姿はどうでもいいことだった。すると、
「パニック障害の発作が出ては困る。落ち着きなさい」
 彼がそう言うと、彼の左手が緑色に光った。よく見ると、彼もリングを指につけていた。ブルガリではないが、銀色のシンプルな指輪だ。ただの輪っかにも見える。
 間接照明で薄暗かった部屋が、新緑の森の中にいるような瑞々しい緑色に一瞬染まった。lineなんか気持ちよくなってきた
と、ゆう子は惚けた顔をした。

 夢のはずなのに、妙に指輪が指に食い込んでいる感覚があって、右手の人差し指でその指輪を触ってみた。
 シンプルなホワイトゴールドで、小さなダイヤが並んでいる。
「その指輪は、君が恋人になる男が選んだものだ。彼に君の指のサイズを教えて、彼が勝手に選んできた。婚約指輪でもなく、結婚指輪でもなくdots私も上手く説明ができなかったら彼は頭を抱えていたから、気に入らなくても許してくれないか。そう、女優の奥原ゆう子とは言っていないが、年齢が27歳で髪はロング、童顔、身長、体重などを教えて買ってもらったものだ」
「体重も?」

「それは悲しいことですね」
「私は頭がいいらしいが、勇敢ではないらしい。非情にもなれない」
「悪い奴はぶったほうがいいよ」
 ゆう子がそう言うと、彼はくすりと笑った。その笑顔がとても純朴に見え、ゆう子は、きっと優しいばかりの人なんだろうな、と思った。
dots全世界の人口は三千万人ほどで、それは悪くない数だとブレーンが教えてくれた。とても統治しやすい。ただ、女性と日本人はもうわずかしかいない」
「日本人がいない?」
「増やしたいものだ。優秀な日本人を」
 ゆう子は、左の薬指にブルガリの指輪がはめられていることに気づいた。

「わたしにはいませーん」
 おどけてみせると、彼はそれを無視して、また口を開いた。
「君たちの時代のSF映画などで想像されている通り、女は妊娠する必要がなくなり、子供たちは人工的に作られていた。自然妊娠がなくなり、女はすることがなくなり、強くなった。しかし、私の少し以前の時代ではそれ故に戦争が起こった。指導者になった女たちが戦争をした時代があった。快楽に耽り、創造を怠った。欧米の女たちは半数が死んでしまい、残った男たちがまた本質を追求するようになった。戦争の犠牲になった男たちを助けるために、そう、あるクスリの副作用に苦しむ男たちを助けるために、私は世界を支配する光をばらまいた。それら、すべてが手遅れだった」
 よく喋る未来の人だ、ゆう子はおかしくなった。しかし、彼が急に肩を落とし、
「父の遺言を聞けばよかった。臨終に間に合わなかった」
と言った。

「三十六歳になるが、私の時代では、女はあまりいない。それに片耳がない女性が多くてね。両耳がある女性の価値は格段と上がるんだ。数が少ないと価値が上がる。一点しかない絵画は数億円の価値が出る。この時代ではそうだろう。私の世界では美女に価値があるが、いやしかし通貨はない。そして私は恋愛は今はしていない。耳があるとかないとか、日本人じゃないとか移民とか。もううんざりなんだ」
「恋は休戦中ですか。また頑張ってね。若いんだから」
 ゆう子が屈託なく笑って言うと、彼は少しだけ苦笑いをしながら、また口を開いた。
「美しい女性にはきちんと恋人がいる。この時代でもそうだろう?」
と笑った。

 羞恥心を見せたゆう子のその様子を見たのか、
「美しいものだ。美女は何をしても美しい。行儀が悪くても寝相が悪くても、そう血まみれでもdots。ただ、私は女はやめたから気にしなくていい」
と言った。
「血まみれってdots。あなたは何歳ですか。女はやめたなんて寂しいですね」
 頭の中で呟く。実際に声に出していたかも知れない。

 そう、やっと眠れたのに、部屋に突然男が現れたのだ。
「悪夢でもない夢で起こされるなんて」
 よくあるSFチックな夢だ、と、ぼんやりと彼を見ていると、その男がそれなりの美青年で、じっと体を見られていて恥ずかしくなった。
 下半身が何度も穿いている白の下着だけで、太ももはもちろん、寝相が悪くてずりあがったスウェットもお腹が丸出しだ。ブラをしていないから、乳房のラインも浮いていると思い、無性に夢から目覚めたくなった。

 お酒のせいか暑苦しくなったゆう子は、ベッドの中で、スウェットの下を脱ぎ、白い下着とスウェットだけになっていた。ブラも外していて、とても無防備に寝ていた。
 よく「行儀が悪い」と叱られる。
「そんなに美人なのに、胡坐をかいて座るな」
 最後にわたしにそう言ったのは誰だろうか。皆に言われるから覚えていない。叱りながら傍にいてくれたらいいのだが、皆、いなくなる。だからか、怖い夢と寂しい夢ばかり見る人生。ゆう子はナイトテーブルの上にあったパニック障害の錠剤の薬を取ろうと手を伸ばしたが、水を用意してなかった事に気づき、また浅い眠りについた。

line今度、事務所の社長に相談しよう。でも、休んで何をすればいいのだろうか。
 趣味はブランド物の新作が出るのを待っていることくらい。
 映画鑑賞は好きだが、それは仕事の一つとも言えた。
「誰かに恋でもしたいな。恋をしたことがないって、樺太で死んだ郵便局の少女たちみたいだ。過去に触れない完璧な純愛ってないかな」
 映画で演じた戦争の悲劇を思い出しながら、そんなことを呟いてしまい、ゆう子は自分がバカに思えて、部屋の灯りを消して目を閉じた。雨音が聞こえてきた。季節は梅雨入り前の晩春。

 2019年晩春。
 その日、奥原ゆう子は、テレビドラマの打ち上げパーティーから帰宅し、酔いを覚ましながら、惰眠を貪っていた。寝ては起き、また寝ては起きて、深夜の二時を過ぎた。
line体調が悪い。
 パニック障害の持病は日増しに悪化し、時間に追われて台本を読むと動悸がしてきて、息が苦しくなる。
「長い期間、休みたいな」
 いつの間にか起きていて、誰もいない部屋で、思わず口にしてしまう。それに気づいた時、ゆう子は目に涙を滲ませていた。

 挨拶もなく、男の長い話が始まってからも、手に物が当たる感覚があっても、「リアルな夢だなあ」と思って、少しずつ楽しむようにしていた。
「君が女優業を休みたいのは知っている」
 そんな話で始まった。
 男の名前は、「トキ」。
 現代から遥か未来、995年後の日本からやってきたと、少し微笑して教えてきたが、もちろんそれもよくあるSFチックな夢。何もかも信じなくて、ただ、「なかなかイケメンの未来人。だけど洋服のセンスが悪い」と、ぼんやりと考えていた。

「誰?」
 眠りかけていたゆう子はベッドの中で顔を上げた。部屋に人の気配がした。
 八階にある新宿の高級マンションの一室は、警備も厳重で、上だけ着ているスウェットの中にブラもしていない。スウェットはパジャマの代わりだが、疲れてしまうとそうなってしまう。
 だから、無機質に見える銀色のスーツを着た男が部屋に現れた時に、ゆう子は、「疲れてるんだ。これは夢だ」と慌てることもなかった。

「息苦しい。お酒の飲みすぎかストレスかわかんない」
 女優の奥原ゆう子はベッドの上で胡坐になって、心臓の辺りに手を置き、静かに擦った。パニック障害の発作だった。しばらく胸を擦り深呼吸をしていて、そのうちに横になり、浅い眠りに就いていた。
 ゆう子は二十七歳。二年ほど前からパニック障害の発作が出るようになった。ちょうど慕っていた父親が死んでからだった。夜、眠っている時の発作が多く、睡眠不足になり撮影現場で疲れるようになり、台詞を読んでいる時にまた発作を助長させた。
 ゆう子は真っ白な下着を穿き、それを露わにして寝ていた。
 指を股間に滑り込ませようとして、しかしまだ心臓が動悸している発作が鎮まっていなかったから、その行為を止める。ゆう子は父親が死んでから、お酒、ブランド物を買い漁る散財、そして彼氏がいない今はセルフプレジャーに依存していた。

小説『衝撃の片想い』 
山宮健 著

序章 国民的人気女優の決意

◆AZ重要事項◆

【佐々木友哉の交通事故について。天才的な洞察力と危険を察知できる直感の持ち主で、空を飛ぶ航空機の異音も察知できるが、交通事故に遭った時はある女に気を取られ、重傷を負ってしまった。現時点で、その女が佐々木友哉の将来の妻になる女である】

●あらすじ

交通事故で重傷を負い絶望していた小説家、佐々木友哉とパニック障害の持病に苦しむ人気女優、奥原ゆう子の部屋に、トキと名乗る未来人が現れ、二人に未来の世界の武器を渡す。多額の報酬を受け取りテロリストと闘うことを強要された友哉だが、そもそもテロリストや凶悪犯と戦う理由が教えられていない上に、入院中に恋人が見舞いに来なかったショックで、彼はやる気を起こさない。その恋人は彼の事故現場にいたのだった。
半ば世捨て人になってしまった彼に、正義感の強いゆう子が、「悪い奴をやっつけて!」と頼む。
未来の薬の副作用「死の恐怖」に苦しむ友哉に、テロリスト、殺人鬼、警察、スパイ、未来人が襲いかかる。そして離縁の復讐に燃える元恋人も、副作用に苦しむ彼を追い詰める。
その友哉の連続するピンチを無償の愛で支え続ける『架空の恋人』ゆう子の純愛の物語。

FRONTIER TRADEは海外の素晴らしい製品や画期的なアイデアを開拓し、日本に広げるための活動をしている。

世界中にあるメーカーやブランドとタッグを組み、その素晴らしさや利便性を日本国内に広げるための活動に取り組んでいます。

代表者の呉くんとは、以前からの知り合いで、私、里中李生のYouTubeの動画撮影や講演会の手伝いをしてくれた事もある好青年です。

呉くんは大学卒業後、東京都内のIT関連企業にてWeb制作・システム構築の現場を経験。

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